アート&カルチャー


第99回 三鷹市美術ギャラリー
MITAKA CITY GALLERY OF ART
(東京都三鷹市)

梅雨入り間近になりました。

一雨ごとに木々の緑が深まり、作物の成長に欠かせないと思えば、 梅雨空も悪くはありません。

雨音を聞きながらお家で静かに音楽を聴いたり読書したりするのもいいものです。 しかし、もう少しアクティブに過ごしたい時におすすめなのが、ミュージアム巡り。

中でも東京のJR三鷹駅(南口)前に位置する「三鷹市美術ギャラリー」で 開催中の「マリー・ローランサン展〜女の一生〜」は、テーマからもアクセスの良さからも この時期ママたちに一押しの展覧会です。(2014年6月22日(日)まで)

三鷹市美術ギャラリー
http://mitaka.jpn.org/gallery/

三鷹市美術ギャラリーは、「人にやさしいまちづくり」の実現を目指すための 文化ネットワークの一環として、1993年(平成5年)10月オープンしました。

近現代美術を中心に、印象派絵画、写真、工芸美術、文学などさまざまなテーマの企画展を 年数回開催されています。

また、三鷹市ゆかりの現代美術作家・高松次郎の展覧会や、三鷹市に在住だった 詩人・大岡信のコレクション展など、地元に関係した展覧会を開催されることも 特徴の一つだとか。

そして、こちらのギャラリーのなによりの特色は、駅前1分という好立地と金曜だけでなく 休館日を除く毎日午後8時まで開館されているという利便性です。

雨でも傘をさすのがごくわずか、お仕事帰りに立ち寄れる気安さは嬉しいですね。

さて、そんな「人にやさしい」美術ギャラリーが、2014年6月22日(日)まで開催しているのが 優美な色彩と独自の画風で知られるマリー・ローランサン(1883-1956)の回顧展です。

20世紀前半のパリを活動拠点とした「エコール・ド・パリ(パリ派)」の多彩な芸術家の中で パリに生まれパリに没した作家の一人。

日本では、同じ年に同じような境遇で生まれ、相前後して没したモーリス・ユトリロ(1883-1955)と ともに人気の画家です。長野県・蓼科には「マリー・ローランサン美術館」もありました。(2011年閉館)

ヨーロッパでは、意外にも2013年、生誕130年を記念して、 パリのマルモッタン=モネ美術館で公的施設として初の回顧展が開催され大好評を収めたとか。

今回の展覧会は、ローランサンの作品をまとまって鑑賞できるまたとない機会、早速伺ってみましょう。

ギャラリーまでのアクセスは極めて簡単!JR線 三鷹駅南口デッキを直進し、CORAL2階入口から入り、 エレベーターで5階に上がると到着です。

割肌ストーンの大きな曲面壁が印象的なオープンロビーを進むと受付がありますので、 チケットを購入し早速「マリー・ローランサン展〜女の一生〜」を観てゆきましょう。

今回の展覧会では、マリー・ローランサンの 初期の自画像から独自の作風を確立してからの優雅な女性像を中心とする作品69点 で、彼女の芸術と波乱に満ちた生涯を辿る構成となっています。

「第T章 最初期(1902−1906)」は、《青色の女性の横顔が描かれた大皿》から始まります。

マリー・ローランサンは、1883年パリの東駅近くで婚外子として生まれました。 お針子の母親と父親からの養育費で不自由のない 暮らしをしてゆく中、公立の名門女子高に進み、次第に画家としての才能に目覚め、 パリ市立の美術学校でデッサン、セーヴルで磁器の絵付けを学びます。

1902年〜1903年頃に大皿に描かれた女性の横顔の繊細で確かな表現力に マリー・ローランサンの才能を感じるかもしれません。

1904年にはアカデミー・アンベールという画塾に入り、 ここでジョルジュ・ブラックやフランシス・ピカビア等とともに学び、 次第に才能を開花させてゆくのです。

ブラックに認められたローランサンは、若い画家たちが世界中から 参集するモンマルトルのアトリエ「洗濯船」に出入りするようになります。 1904年秋頃からは、ピカソのアトリエにも出入りします。

「第U章 アポリネールとの出会い(1907−1913)」では、ブラックを介して、 アカデミックで写実的な画法からキュビズム的な技法へ傾斜し、さらに、 ピカソの紹介で、詩人のギヨーム・アポリネールとの運命的な出会いを経て アンリ・ルソーの影響を受けた作品を描きます。

そして、アポリネールと恋仲になったローランサンは、多くの才気あふれる画家たちの中で、 唯一の女性芸術家として頭角を現してゆきます。

さらにピカソ作品の収集家として有名なアメリカの女性美術収集家ガートルード・スタインの コレクションにも加えられるほどに成長をとげます。

しかし、アポリネールとの関係は次第に悪化し、ついに破局を迎えるのです。

アポリネールのこのローランサンとの別離を綴った詩が彼の代表作  「ミラボー橋」になったというのですから皮肉ですね。

このコーナーでは、そのころ描かれた静物や自画像、肖像画などが展示されています。

1907年には、アンデパンダン展にも初出品。1908年頃描いた自画像からは、きりっとした表情に 彼女の画家としての自信がうかがえるのでは?

さらに、アール・ヌーヴォーの影響も見られるようになり、《ジャン・ロワイエール》、 《狩りをするディアナ》などでは、キュビズムやルソーの影響はみられるものの 女性らしい独自の優美な画法を編み出しています。

そして、淡い色調に憂いを帯びた女性像の誕生です。愛らしい作品《青と黒の帽子をかぶった少女》をお見逃しなく!

「第V章 フォン・ヴェッチェン男爵との結婚(1914−1920)」のコーナーでは、 1913年、たったひとりの肉親である母親を失ったローランサンが、ドイツ人男爵オット―・フォン・ヴェッチェンと 結婚していた時代の作品が展示されています。

幸せも束の間、第一次世界大戦が勃発し、ドイツ国籍となったマリーはオットーとともにスペインへ亡命。 その後も各地を転々としてついにオットーの実家のあるドイツのデュッセルドルフに落ち着いたものの、 結局オットーとも離婚し、1921年パリに舞い戻ります。

この時代の作品には、パリや親しい友人たちと離れたことによる深い孤独感があふれているものの 色彩に家庭的な色として緑色が加わってくるなどの変化が見られます。

「第W章 成熟〜晩年(1921−1956)」では、パリに戻ったマリーが肖像画家として人気を博し、 ココ・シャネルなどパリ社交界から多くの肖像画の注文を受けるとともに、バレエ・リュスを主宰する ディアギレフの依頼で、バレエ「牝鹿」の舞台衣装と舞台装飾を手掛けるなど 芸術家として大成功を収めてゆく時代の作品が展示されています。

パステル調の色彩に赤や黄色が加わり、円熟した華麗な作風を確立してゆくのも見どころ。

《扇をもつ若い女》、《花を生けた花瓶》の優美さ、《モンテスパンとラヴァリエール》の マリー風歴史画、《らっぱをもつ子供》の愛らしさなど見応えがあります。

どれもマリー・ローランサンの個性豊かな作品たちです。

展示には、ローランサンがリセ時代にとった優秀な成績表やマン・レイ撮影のポートレイトなども含まれていて、 興味深い構成となっています。

「マリー・ローランサン展〜女の一生〜」、まだまだ女性画家が稀な時代、多くの才能あふれる芸術家たちとの交流に恵まれ、 その中に飲み込まれることなく、女性としての個性を発揮し、激動の時代を生き抜き、 成功を勝ち取っていった一人の女性画家の生涯と芸術を辿れる興味深い展覧会です。 お見逃しなく!

展示を堪能し、お時間あれば、ロビーで「パリの画家 マリー・ローランサン」と題する講演会のビデオを視聴 するのもおススメです。今回の展覧会の詳しい解説が伺えます。

また、受付で小学生用に楽しい鑑賞リーフレットが配布されていますので、ご利用くださいね。

ミュージアムショップでは、ポストカードなどの展覧会関連グッズが揃っています。

一息つきたい時は、エレベータ―脇に設置してある、珍しいオリジナルペイントの自動販売機から飲み物を 購入して、フリーロビーでちょっと一息つくのもいいかもしれません。

小学生がワークショップでペイントした自販機は、小さいお子様の視線の高さに、動物やこどもや宇宙人が描かれているとっても楽しい作品です。

鬱陶しい梅雨時も三鷹駅前の都市型ミュージアム「三鷹市美術ギャラリー」にいらして「マリー・ローランサン展〜女の一生〜」 (2014年6月22日(日)まで)を楽しんでみませんか?

ローランサンのエレガントな絵画の数々に癒され、波乱万丈の生涯に想像力を刺激され、豊かな時を過ごすことができるでしょう。





【赤ちゃん連れのお母様へ】
三鷹市美術ギャラリーはベビーカーで入館できます。
(込み合う場合には、ベビーカーを預かっていただきますので、
抱っこひものご用意をおススメします。)、
オムツ替えは館内のバリアフリートイレに
オムツ替えシートが設置されています。







このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せくださいね。
お待ちしております。




三鷹市美術ギャラリー

1907年24歳頃のマリー・ローランサン

左:1950年67歳頃のマリー・ローランサン
右:《二人の天使》 1949年 リトグラフ 26.7×20cm

《扇をもつ若い女》 1950年頃
油彩、カンヴァス 55×46cm

《花を生けた花瓶》 1950年頃
油彩、板 49.5×35.5 cm 

《らっぱをもつ子供》 1950年頃
油彩、カンヴァス 46×55 cm

《モンテスパンとラヴァリエール》 1952年頃
油彩、カンヴァス 55×46.5 cm

1953年70歳頃「三人の若い女」を描くマリー・ローランサン

自動販売機(ワークショップで小学生がペイント)












施設情報

三鷹市美術ギャラリー
(公益財団法人 三鷹市芸術文化振興財団)

住所:東京都三鷹市下連雀3-35-1
CORAL(コラル)5階

TEL:0422-79-0033

開館時間:午前10時〜午後8時
(入館は午後7時30分まで)
※展覧会によって異なる場合があります。

休館日:月曜日、年末年始(12月29日〜1月4日)
※月曜日が休日の場合は開館し、その翌日と翌々日休館
※展示替えなど臨時休館あり。

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
三鷹市美術ギャラリーをご覧ください。

*掲載許諾・取材協力:三鷹市美術ギャラリー
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