新緑の美しい頃となりました。
街にも瑞々しくフレッシュな空気が溢れる季節ですね。
ゴールデンウィークも始まり、海へ山へ海外へと繰り出している方もいらっしゃるかもしれませんが、
交通ラッシュを避けて東京でゆっくり過ごす方々も多いかも。
今回はそんな東京ステイ組の気分転換なるような、とっておきのミュージアムをご紹介しましょう。
東京・駒込の特別名勝「六義園」にほど近い地に静かに佇む、東洋学に関する専門ミュージアム
「東洋文庫ミュージアム」です。
東洋文庫ミュージアム
http://www.toyo-bunko.or.jp/museum/
「東洋文庫ミュージアム」は、90年を超える歴史をもつ東洋学専門の図書館「東洋文庫」が
2011年に開設したミュージアム。
「東洋文庫」は、三菱第三代当主岩崎久彌氏が1924年に設立した、東洋学分野での日本最古・最大の研究図書館、
世界5大東洋学研究図書館の一つに数えられている施設です。
蔵書数は国宝5点、重要文化財7点を含む約100万冊!
その内訳は、漢籍40%、洋書30%、和書20%、他アジア言語(韓・越・梵・イラン・トルコ・アラビア語等)
10%と多岐にわたります。
「東洋文庫ミュージアム」は、この名門図書館の蔵書の中から国宝、重要文化財などの貴重書や珍しい絵画を通して、
一般の方々にアジアの歴史や文化に興味を持って頂くことをミッションとして開設されました。
「東洋学」専門ミュージアムというとなにやら小難しいという印象をもたれるかもしれませんが、
日本もアジアの一員として日本を含むアジアの歴史や文化を学ぶことは今後ますます必要かもしれません。
しかもこちらのミュージアム、カフェもガーデンもショップも備え、誰もが気軽に楽しめるミュージアムというポリシーで
運営されているとか。「赤ちゃん連れでも楽しめるミュージアム」としては行かない手はありませんね。
早速取材してきましたので、ご紹介しましょう。
東洋文庫ミュージアムへのアクセスは、JR山手線駒込駅南口、東京メトロ南北線駒込駅2番出口から8分と便利です。
駒込駅を出て、本郷通りに沿って「六義園」方面に直進、上富士前交差点を渡り、すぐに不忍通りに沿って右折、ほんの少し進むと
左手にMUSEUMと大きく表示された瀟洒なビルが見えます。こちらが、東洋文庫ミュージアム。
入口を入ると、右手に「ムセイオンの泉」という池があります。古代エジプトのプトレイマイオス朝の都アレクサンドリアにあったとされる
世界最高の学問の殿堂ムセイオンに因んだコーナー。
左手、ミュージアムショップ「マルコ・ポーロ」奥の受付でチケットを購入、早速、中庭をのぞみ高い吹き抜けの解放感のある
「オリエントホール」に向かいましょう。
ブラザーズ・フォアのメンバー、ボブ・フリック氏が、東洋文庫ミュージアムのために作曲された、心地よいBGMも出迎えてくれます。
(曲名:「Reflections in Time・邦題:組曲−東洋文庫−」)
オリエントホールは、「時空をこえる本の旅」の出発点。東洋文庫の誕生から今日までの歩みや、
約100万冊に及ぶ東洋文庫の蔵書の全容が映像で紹介され、国内最長の展示ケース内には現在「儒教研究・理解の歴史」と題し、
さまざまな言語で記された貴重な古書が並んでいます。
また、左手壁面には「広開土王碑文拓本」と「江戸大絵図」の巨大な原寸大レプリカが天井からつりさげられ、
情報端末「遷画〜 デジタルシルクロード」も設置されています。
さらに東洋文庫ゆかりの六義園に関する「六義園をめぐる歴史」なども期間限定で特別展示され、見どころ満載!
(2016年5月30日まで)
1F展示を堪能したら吹き抜けの階段を上がり2Fに進みましょう。(エレベーター有。受付でご相談ください。)
2Fには、東洋文庫の数あるコレクションの中でも最も有名な「モリソン書庫」が展示されています。
1917年、東洋文庫の創設者、岩崎久彌氏が北京駐在のオーストラリア人G. E. モリソン博士から譲り受けた
東アジアに関する欧文の書籍・絵画・冊子等約2万4千点の質・量ともに圧巻のコレクション展示です。
現在はアジアの鳥類に関する美しい図鑑も並べられ目を楽しませてくれます。
正面の革張りソファーに腰をかければ、まさに時空を超える異空間にひたることができるでしょう。
映画「ハリー・ポッター」に出てくる図書館の一場面を彷彿とさせるかもしれません。
さて次に特別企画展「もっと知ろうよ!儒教」に進みましょう。(2016年8月7日まで)
「儒教の教えは今からおよそ2500年前、孔子とその弟子たちによって説かれ始めました。
その広がりは、中国大陸から朝鮮半島、台湾、ベトナム、日本列島など東アジア全域に及びます。
『論語』が今日でも多くの読者を得ているように、一般には倫理道徳として理解されていますが、
祖先崇拝を中心とした宗教としての性格を有すという考えもあります。」と解説にあります。
展示は、儒教の基本から始まり、「儒教の世界観にふれる」、「『新』儒教?朱子学の誕生と伝搬」、「儒教と他宗教・他思想」、
「儒教と社会」、「朝鮮の儒教」、「ベトナムの儒教」、「日本の儒教」というテーマに沿って進みます。
展示作品は、 国宝『毛詩(もうし)』、重文『古文尚書(こぶんしょうしょ)』、科挙の最優秀答案『殿試策(でんしさく)』など
儒教文化の真髄ともいえる名品を筆頭に、「儒教とキリスト教」コーナーの「マテオ・リッチと徐光啓」
や「日本の儒教」コーナーの「赤穂浪士討ち入りの図」などなど見どころ満載!
ポップによる分かり易い解説もあり儒教初心者から上級者まで楽しめる内容になっています。
「もっと知ろうよ!儒教」展をめぐれば、「これであなたも儒教通!?」かも。
また、同時開催として「記録された記憶〜東洋文庫の書物からひもとく歴史」と題し、東洋文庫最古のお宝「甲骨卜辞片(こうこつぼくじへん」や
1686年刊の『聖書』、マルコ・ポーロの『東方見聞録』など東洋文庫の誇る資料や蔵書を紹介するコーナーもありますので、お見逃しなく!
さて、たっぷり展示を堪能したら、緑豊かな中庭に出て、「カフェ・オリエント」に続く「知恵の小径」をたどってみましょう。
小径のかたわらには、アジア各地の言葉が刻まれたパネルが並んでいます。
有名無名さまざまな人たちの言葉がそれぞれの文字で表現されていて、あらためて文字の多様性に驚きます。
そして、文字の造形的な美しさに感動!さらに、うっすらと記された日本語の意味と作者に関する情報を眺めます。
ピンとくる言葉に出遭えたらラッキーですね。
また、小径に沿った建物外壁の植物模様のレリーフも木々の緑とともに美しい景観を形造っています。
さて、中庭の「シーボルト・ガルテン」は、博物学、そして欧州における東洋学の発展に貢献した
シーボルトの業績を記念して作庭されました。
庭園内には、東洋文庫が所蔵する最も著名な博物図鑑の一つ、シーボルトの『日本植物誌』に掲載される、
実物の木々や花々が植えられています。
特に長崎に残した妻の名「おたき」から、オタクサという学名がついたアジサイは、見どころのひとつです。
また、一角には「東洋文庫賞」を受賞した東京藝術大学学生による屋外彫刻も設置されています。
カフェやランチには、東洋文庫と小岩井農場が共同でプロデュースする
洋風レストラン「オリエント・カフェ」がおススメ!
小岩井農場の経営者でもあった東洋文庫創設者の岩崎久彌氏にちなんだカフェレストランです。
バーカウンターには、小岩井農場の歴史とともに生きてきた、からまつの1枚板が切り出され、
「シーボルト・ガルテン」には、小岩井農場から桜の木が移植されています。
メニューには、小岩井農場の厳選素材が活かされたお料理が並びます。お庭をなが
めながらほっと一息、くつろいだランチタイムやカフェタイムを過ごすことができるでしょう。
最後に、東洋文庫が世界に誇るコレクション『東方見聞録』の著者であり、ヨーロッパからアジアをまたにかけた貿易商
マルコ・ポーロから名前をとったミュージアムショップ「マルコ・ポーロ」に立ち寄ってみましょう。
ショップには、東洋文庫オリジナルグッズはじめ大英博物館・台湾中央研究院などの提携機関グッズ、
ベトナムの工芸雑貨、さらに小岩井農場のジャムや焼き菓子などが取り揃えられています。
豊富な品揃えの中からお土産をさがすのも楽しいかも。
また、お時間があれば、近隣の岩崎家ゆかりの和歌の心が息づく雅な大名庭園「六義園」を散策するのもおすすめです。
江戸時代の代表的回遊式築山泉水庭園は、都会の喧騒を忘れさせてくれるでしょう。
東洋文庫ミュージアムでは、六義園とのセットチケット(割引有)を販売していますので、利用されるのが便利です。
風薫る5月、駒込の六義園にほど近い「東洋文庫ミュージアム」に、ご家族でいらしてみませんか?
東京に居ながらにして「時空をこえる本の旅」を楽しみ、ガーデンやカフェや小径で癒され、
素敵な時間を過ごすことができるでしょう。
アジアの歴史や文化をより身近に感じるようになるかもしれません。
ゴールデンウィークのお出かけスポットとしてもおススメです。
5月初旬は、ツツジのシーズン。元禄時代のツツジ園芸ブームの中心地「六義園」とセットにして、
一日東京再発見はいかが?
ミュージアムと庭園散策で充実したリフレッシュタイムを過ごすことができるでしょう。
【赤ちゃん連れのお母様へ】
・「東洋文庫ミュージアム」はベビーカーで入館できます。
(2F展示室にエレベーターで向かいたい場合は受付でご相談ください。)
・オムツ替えはオムツ替えシートが設置されている1Fのバリアフリートイレが利用できます。
・パーキングがありますので、ご利用の際には受付にお申し出ください。
このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの
ミュージアム情報を募集しています。
お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せくださいね。
お待ちしております。
東洋文庫ミュージアム
オリエントホール
「中国の哲学者、孔子の倫理」
モリソン書庫
「ヒマラヤ山麓の鳥類」
「先師孔子行教図」
「もっと知ろうよ!儒教」展
「周易経伝集程朱解附録纂註」
国宝 「毛詩」
7〜8世紀(唐時代)
写書 一軸
27,2×286p
「マテオ・リッチと徐光啓」
1667年 アムステルダム刊
61.0×45.0p
「東方見聞録」
マルコ・ポーロ/ピピノ訳
1485年 アントワープ刊
古活字版 1冊 20.1×14.0p
知恵の小径
オリエント・カフェ(正面)、シーボルト・ガルテン(中庭)
ミュージアムショップ「マルコ・ポーロ」
特別名勝 六義園
東洋文庫ミュージアム
住所:東京都文京区本駒込2丁目28番21号
TEL:03-3942-0280
開館時間:午前10時〜午後7時
(入館は午後6時30分まで)
休館日:火曜日(火曜日が祝日の場合は翌平日)
展示替期間、臨時休館日はチケット売場及びHPに掲示
入館料:900円(一般)、800円(シニア)、700円(大学生)、
600円(中高生)、290円(小学生)
詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
東洋文庫ミュージアムをご覧ください。
*取材協力・掲載許諾:
東洋文庫ミュージアム
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