アート&カルチャー


第130回 すみだ北斎美術館
The Sumida Hokusai Museum
(東京都墨田区)



2017年が明けました。

今年も毎月1館ご家族で楽しめるミュージアムを厳選してご紹介していきますので、 どうぞよろしくお願いいたします。

初春を祝してお届けする第一弾は、昨年11月東京墨田区両国駅からほど近い地に誕生したばかりの 「すみだ北斎美術館」です。

すみだ北斎美術館
http://hokusai-museum.jp/

「すみだ北斎美術館」は、その名のとおり、日本が世界に誇る江戸文化を代表するアーティスト、 葛飾北斎(1760−1849)の画業を専門に展示する美術館です。

北斎は、その代表作「冨嶽三十六景」シリーズの「神奈川沖浪裏」、「山下白雨」、「凱風快晴」などが 教科書に載っているほど有名な画家ですので、皆さまもご存じのことでしょう。

ところで、その北斎、江戸の本所割下水(現・墨田区北斎通り)付近で生まれ およそ90年の生涯の大半を、墨田川の東岸に位置する現在の墨田区内で過ごし、 優れた作品の数々を残したということをご存じでした?

「すみだ北斎美術館」が現在地に誕生したことには、北斎と「すみだ」のそんな深いつながりがあるのです。

コレクションの中心は、墨田区が収集した作品に加え、ピーター・モースコレクションや 楢崎宗重コレクションをはじめ、高名な研究者から譲り受けた資料。

それらコレクションを中心に企画展が開催されています。

現在開催中の企画展が開館記念展「北斎の帰還−幻の絵巻と名品コレクション」。(2017年1月15日[日]まで)

北斎の作品が生誕の地に還ったことを祝し、海外から里帰りした北斎の幻の絵巻「墨田川両岸景色図巻」全巻をはじめ 墨田区所蔵の北斎の名品・優品の中から前後期合わせて約120点を一挙公開するという圧巻の展覧会です。

しかも美術館の建築デザインは、妹島和世氏。西沢立衛氏と共に石川県金沢市の「金沢21世紀美術館」の設計や 建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞されたことでも知られる建築家です。

作品に加え新しい建築デザインの魅力にも出会える美術館、これは観に行かないわけにはいきません。 取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

「すみだ北斎美術館」までのアクセスは、JR総武線「両国駅」東口より徒歩9分、 都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口からは徒歩5分と便利です。

お子さま連れにおすすめは、JR両国駅西口から江戸東京博物館に沿って清澄通りまで進み、「江戸東京博前」の信号を渡り、 北斎通りを直進するルート。ほどなく右手に緑町公園が見えてきます。

公園に面して建つ斬新な建物が「すみだ北斎美術館」です。

子どもたちが元気に遊具で遊ぶ公園を前にして建ち、優しく周囲の景色を映す鏡面アルミパネルの建物外壁と三角形のスリットが 印象的な外観。建物全体に「裏」がなく、周辺地域のどこからでもアクセスすることができるデザインは妹島氏ならでは。

エッジの効いたスリット状エントランスを入ると右手に美術館エントランスホールがあります。

受付カウンターでチケットを購入し、早速エレベーターで、4Fに向かいましょう。

4Fには、常設展示室と企画展示室があります。

企画展示室では、開館記念展「北斎の帰還−幻の絵巻と名品コレクション−」(2017年1月15日[日]まで)が開催されています。

展示は、序章「北斎のイメージ」、1章「北斎の描いたすみだ」、2章「幻の絵巻−隅田川両岸景色図巻−」、 3章「名品ハイライト」の4つの章から構成されています。

序章「北斎のイメージ」では、北斎本人や後世の画家や版画家たちの制作した北斎の肖像画が展示されています。

北斎の孫弟子といわれる挿絵画家伊藤晴雨作、宝珠を描いて子どもに渡す北斎像や質素な住まいから北斎の人と生活がイメージできるかもしれません。

次に1章「北斎の描いたすみだ」に進みましょう。このコーナーでは、 墨田川東岸に位置する「すみだ」に点在する名所や風景の四季折々の姿が北斎の作品によって紹介されています。

北斎が画業の初期に制作し、好評であったため版が重ねられたとされる「新板浮絵両国橋夕涼花火見物之図」や 「すみだかは」、「風流墨田川八景」などの作品が並びます。

当時の「すみだ」のにぎわいが感じられる作品たちです。

次は3F企画展示室で展覧されている第2章 「幻の絵巻」に進みましょう。

第2章では、今回の企画展のハイライトとなる「隅田川両岸景色図巻」の全巻が一挙に公開されています。

約100年ぶりに再発見されたこの絵巻は、両国橋から大川橋(現在の吾妻橋)、山谷堀、木母寺辺りまでの墨田川両岸の風景と、 新吉原での遊興の様子を描いた全長約7mに及ぶ北斎の壮年期の傑作とされる魅力的な肉筆画です。

墨田川の水面に橋や船、岸辺の影が映る様子が丁寧に洋風陰影法を交えて表現され、新吉原での遊興の様子が細緻に描かれているのが見どころ。

また、この絵巻が制作された背景には、すみだの地を巡る制作者北斎と注文主の烏亭焉馬の友情があり、その二人の交流を物語る作品であるとか。 さらに、約100年前に日本のコレクターとパリの浮世絵商の元にあったという資料もあわせて展示されていて、絵巻をめぐる様々なストーリーにも興味がわくでしょう。

続く、第3章「名品ハイライト」では、墨田区が独自に収集してきたコレクションの中から、生涯の代表作として知られる「冨嶽三十六景」 をはじめとする錦絵、摺物、絵手本などの版物、肉筆画など美術館の名品が展示されています。

中でも代表的な「冨嶽三十六景 凱風快晴」や「冨嶽三十六景 甲州三島越」を初め、「諸国瀧廻り」シリーズや「諸国名橋奇覧」シリーズの作品など大判錦絵は必見!

さて、「北斎の帰還」展もさることながら、「すみだ北斎美術館」で見逃せないのが、常設展示です。 北斎の人と作品についてちょっとおさらいして企画展に向かうのも後でじっくり鑑賞するのも北斎芸術をより深く楽しむことに役立つことでしょう。

常設展示室の入口付近にはもう一つの100年ぶりとして、北斎が86歳の時に描き、地元・牛嶋神社に奉納したものの、関東大震災で焼失、 白黒写真しか残されていなかった幻の肉筆画「須佐之男命厄神退治之図(すさのおのみことやくじんたいじのず」の推定復元版が 展示されていますのでお見逃しなく!

この作品の復元プロジェクトに関する興味深いビデオも上映されていますので、お時間があればご覧になっては?

さて、常設展示室は、7つのエリアから構成されています。

「1.すみだと北斎」では、北斎とゆかりの地「すみだ」とのつながりが紹介されます。

次いで、「2.習作の時代」、「3.宗理様式の時代」、「4.読本挿絵の時代」、「5.絵手本の時代」、「6.錦絵の時代」、「7.肉筆画の時代」では、 各期の代表作(実物大高精細レプリカ)とエピソードで、北斎の生涯を辿ることができます。

北斎アトリエの再現模型もあり、北斎と娘阿栄(おえい・雅号は応為、生没年未詳)の精巧な人形がリアルに北斎の作画の様子を、 動きも交えて再現していますので、思わず見入ってしまうでしょう。

また、『北斎漫画』などの絵手本をタッチパネルモニタで紹介する「絵手本大図鑑」や高精細画面モニタでの錦絵鑑賞、 錦絵の制作工程を映像も交えて紹介するコーナーなどもあり見どころ満載!

北斎ワールドをたっぷり楽しんだら、1Fエントランスホールに設置されたミュージアムショップに立ち寄るのもいいかもしれません。 展覧会図録をはじめ、所蔵品をモチーフにしたオリジナルグッズ、 北斎を主とする浮世絵グッズやアートデザイングッズ、“メイドインすみだ”の商品などが取り揃えられています。

また、2017年2月4日(土) から4月2日(日)まで開館記念展U「すみだ北斎美術館を支えるコレクター−ピーター・モースと楢ア宗重  二大コレクション−」展が開催されます。(前期:2/4〜3/5、後期:3/7〜4/2)

世界有数の北斎作品コレクターで、研究者でもあったピーター・モース氏と浮世絵版画を大きな視野でとらえ、 貴重な資料を収集し研究してきた浮世絵研究の第一人者である楢ア宗重氏から受け継いだ貴重な作品から、前後期合わせて約130点を紹介する企画展です。

楽しみですね。

筆者も北斎作品の中でもとりわけ好きな「冨嶽三十六景 甲州石班沢」(前期:2/4〜3/5)を観ることができそうなので、楽しみにしています。

尚、開館記念展「北斎の帰還−幻の絵巻と名品コレクション―」終了後も通常通り美術館は開館し、常設展示は観ることができます。 北斎ワールドを分かりやすく紹介している充実の展示ですので、お子さま連れにおススメ!

今年の初美術館には、東京・両国駅からほど近い「すみだ北斎美術館」にいらしてみませんか?

新しいスタイリッシュな美術館で、日本が世界に誇るアーティスト葛飾北斎の様々な作品に出会い、 偉大な北斎芸術の魅力を楽しむことができるでしょう。

冬休みのお出かけスポットとして、すみだ界隈散策を兼ねて、ご家族でお出かけになるのもおすすめです。









【赤ちゃん連れのお母様へ】
「すみだ北斎美術館」にはベビーカーで入館できます。 (1F受付で貸出も有ります。但し、混雑の場合は ベビーカーの使用できない場合もあります。)
オムツ替えは1Fの多目的トイレとB1Fの授乳室のベビーベッドが利用できます。
B1Fに授乳室がありますので、安心ですね。(お湯をご希望の方は、 1F受付までお申し出ください。)






このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せくださいね。 お待ちしております。




すみだ北斎美術館

エントランス

外部通路

伊藤晴雨
貧しき或る日の北斎老
絹本着色一幅 年代未詳
すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎
「新板浮絵両国橋夕涼花火見物之図」
大判錦絵 天明年間(1781-89)頃
すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎
「墨田川両岸景色図巻」(部分:両国橋付近)
紙本着色一巻 文化2年(1805)
すみだ北斎美術館蔵

葛飾北斎
「冨嶽三十六景 凱風快晴」
大判錦絵 天保2年(1831)頃
すみだ北斎美術館蔵

常設展示室入口

北斎アトリエ再現模型

葛飾北斎
「冨嶽三十六景 甲州石班沢」
大判錦絵 天保2年(1831)頃
すみだ北斎美術館蔵

墨田区立緑町公園


 



施設情報

すみだ北斎美術館


住所:東京都墨田区亀沢2−7−2

TEL: 03- 5777- 8600(ハローダイヤル)

開館時間:
9: 30〜17 : 30(入館は閉館30分前まで)

休館日:
毎週月曜日
(祝日または振替休日の場合は、その翌平日)
年末年始
臨時休館の場合もあり
入館料:
・常設展:一般 400円/ 高校生、大学生、
専門学校生、65歳以上 300円
・企画展:展覧会ごとに異なります。

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開館記念展
「北斎の帰還−幻の絵巻と名品コレクション−」
2016年11月22日〜2017年1月15日

開館時間:9:30−17:30
(入館は閉館の30分前まで)
休館日:
毎週月曜日
(祝日・振替休日の場合は翌平日)
年末年始
(12月29日(木)〜1月1日(日・祝)、1月10日(火)
入館料:一般:1200円/ 高校・大学生:900円/
 65歳以上:900円 /中学生:400円
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詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
すみだ北斎美術館 をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
すみだ北斎美術館
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