アート&カルチャー


第134回 京都国立博物館
Kyoto National Museum
(京都府京都市)



風薫る5月。ゴールデンウィークも始まりました。
気候の良い時期の長期休暇ですから、旅行には最適!

そこで、今回は、京都へ足をのばし、京都でしか味わうことができない、とっておきの展覧会を期間限定で開催している 「京都国立博物館」をご紹介しましょう。

京都国立博物館
http://www.kyohaku.go.jp/

その展覧会とは、「京都国立博物館開館120周年記念 特別展覧会 海北友松(かいほうゆうしょう)」。(2017年5月21日[日]まで)

「開館120周年記念特別展覧会 海北友松」公式サイト
http://yusho2017.jp/

桃山画壇最後の巨匠・海北友松(1533−1615)の大回顧展です。

「京都国立博物館」は、1897年(明治30)5月に「帝国京都博物館」として開館した歴史ある博物館。

煉瓦造平屋建ての「明治古都館(本館)」や正門がその由緒ある姿をとどめています。

設計を手掛けたのは片山東熊。赤坂離宮(迎賓館)をはじめ、奈良国立博物館本館、東京国立博物館表慶館の設計にも 携わった宮廷建築家です。

ヨーロッパのフレンチルネサンス様式をとりいれた重厚でエレガントな本館建物と正門は重要文化財に指定されています。

一方、「開館120周年記念 特別展覧会 海北友松」が開催されている「平成知新館」は、2014年(平成26)9月にオープンした新展示館。

ニューヨーク近代美術館新館、東京国立博物館法隆寺宝物館、豊田市美術館などを設計された世界的建築家、谷口吉生(1937−)氏の設計です。 (東京国立博物館法隆寺宝物館、豊田市美術館はこのコーナーですでにご紹介していますので、バックナンバーをご覧ください。)

シンプルモダンなデザイン、池(水)を多用するアプローチ、繊細なディテールに特徴があり、美術館を数多く手掛けてこられた建築家。

「京都国立博物館」では、そうした空間で、陶芸、考古、絵画、書跡、工芸、彫刻など主に平安時代から江戸時代にかけての 京都の文化を中心とした文化財を、収集・保管・展示するとともに、文化財に関する研究、普及活動を行っています。

展示としては、平常展示のほかに特別展覧会が1年に2回開催されています。

現在開催されている特別展覧会が「開館120周年記念 特別展覧会 海北友松」。取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

「京都国立美術館」へのアクセスは、JR京都駅から、市バスが便利。 駅前D1のりばから100号、D2のりばから206・208号系統で「博物館・三十三間堂前」バス停下車すぐです。

南門でチケットを購入。右手に「明治古都館」を眺めながら噴水を中心とする気持ちの良い 前庭をまっすぐに歩いていくと、すっきりと端正な印象の「平成知新館」に到着します。

エントランスを抜けエレベーターで会場入り口の3Fに向かいましょう。

ところで、海北友松は、狩野永徳や長谷川等伯と並び称される桃山画壇最後の巨匠といわれる絵師。

近江の戦国大名浅井家の家臣の家に生まれ、若年を東福寺で過ごしましたが、主家や兄が信長に滅ぼされたため、 還俗して狩野派の門をたたき、画の道に進んだと伝えられています。

武士の気概と絵師の誇りを併せ持った友松は、やがて独自の画境を拓き、京都の名だたる寺院を舞台にその才能を花開かせ、 天皇や宮家のために筆をふるうようにもなりました。

今回の展覧会では、その代表作をはじめ、数少ない初期作、新発見・初公開作品、さらに諸人との広い 交流の足跡を物語る書状や文書類など70余件が展示されています。

展覧会は、次の十章により友松の生涯を辿る構成になっています。

「第一章 絵師・友松の始まり−狩野派に学ぶ−」では、 六十歳以前の友松の作とされる「山水図屏風」や「柏に猿図」などが紹介されています。

「柏に猿図」は、柏の枝に捕まって戯れる愛らしい4匹の手長猿が描かれている作品。 母猿と思われる白猿が子猿の腕をしっかと掴んでいる微笑ましい構図に心がなごみます。 猿たちの毛並みのテクスチャーが繊細に描かれ、渓流や草花などの情景描写が巧みな魅力的な作品です 。

「第二章 交流の軌跡―前半生の謎に迫る―」では、友松の心友であった明智光秀の 重臣・斎藤利三と真如堂の僧で茶人の東陽坊長盛、さらに豊臣秀吉、石田三成、 細川幽斎等錚々たる人々との関わりが紹介されます。

ここでは、「海北友松夫妻像」や「海北家由緒記」などの関連作品や資料により友松の 前半生を解き明かしています。

「第三章 飛躍の第一歩―建仁寺の塔頭に描く―」では、60歳を過ぎて頭角を現し始めた 友松の舞台となった建仁寺のための作品が展示。建仁寺はいつしか「友松寺」といわれるようになったとか。

「第四章 友松の晴れ舞台―建仁寺大方丈障壁画―」と題するコーナーでは、慶長4年(1599)兵火によって灰燼に帰した 建仁寺方丈が再興される際、内部装飾を任された67歳の友松の描いた大迫力の「雲龍図」が展示されています。 二頭の巨龍のスケール感と墨の気迫に圧倒されるでしょう。

「第五章 友松人気の高まり―変わりゆく画風―」では、建仁寺大方丈に描いて以降大人気となった友松の活動が一層 拡大し、公家との関わりが深まるとともに、重厚感や激しい気迫は影を潜めて、「放馬図屏風」などのように、 多様化する支持者の要求に応えて描いた最晩年期までの水墨画が紹介されています。

次の「第六章 八条宮智仁親王との出会い―大和絵金碧屏風を描く―」では、 古典に習熟した親王との交流で磨かれた感性で描いた、華やかで抒情あふれる屏風が展示されています。特に 「網干図屏風」は、居並ぶ干網を夏から秋の情景の移ろいとともに、大胆かつ斬新に描いた素敵な作品です。

さて、「第七章 横溢する個性―妙心寺の金碧屏風―」では、 最晩年に近い友松が、妙心寺を舞台に描いた華麗な金碧屏風が展示されています。

「花卉図屏風」と題する華やかな金碧屏風は、 咲き誇る牡丹を右隻に、清楚な梅椿を左隻にレイアウト。牡丹の花や葉は一つ一つ丁寧に写実的に描かれ、モダン!

ここでは、「屏風画料請取状(妙心寺宛)」という珍しい資料も展示されています。

「第八章 画龍の名手・友松―海を渡った名声―」では、照明を落とした展示室で友松の様々な龍図を観ることができます。 不気味なものあり、思わずくすっとするものあり、龍の顔が人面のようなものあり、バラエティに富み楽しめます。

画龍の名手として、友松の評判が朝鮮でも高かったことが分かる朝鮮高官・朴大根の書状も展示されています。

「第九章 墨技を楽しむ―最晩年期の押絵制作―」では、押絵貼屏風の筆遣いの巧みな逸品を観ることができ、友松の人気のほどが うかがえます。

そして最後の「第十章 豊かな詩情―友松画の到達点―」では、今回の展覧会のフィナーレを飾るに ふさわしい友松最晩年期の最高傑作と言われる「月下渓流図屏風」が展示されています。

1958年(昭和33)にアメリカの美術館が所蔵して以来初めての里帰りをはたした必見の作品。

図に描かれるのは、早春の夜明けの渓谷の情景。朧月が渓流をはじめ松や白梅、椿や土筆、タンポポなどを優しく 照らす様を詩情豊かに描いた名品!!この作品は、最晩年の友松が辿りついた境地を映しているのでしょうか? 観るものの心を静かに引き付け、魅了することでしょう。

最晩年まで絵筆をとり続け、83歳でその生涯を終えた桃山最後の巨匠の知られざる生涯と、その画業の全貌に迫る 京都国立博物館開館120周年記念にふさわしい素晴らしい展覧会。お見逃しなく!

さて、海北友松の様々な作品を堪能したら、 1Fの名品ギャラリー、彫刻展示室の「仏像入門」で、仏像にはどのような種類があるのか、 仏像は何からつくられているのか、という二つのテーマについて学習するのもいいかもしれません。(2017年5月21日[日]まで)

1Fロビーのミュージアムショップ では、展覧会図録はじめ関連書籍、美術はがき、美術複製品やステーショナリーなど豊富に取り揃えられています。

また、ランチやティータイムには、1Fのレストラン The Muses (ザ・ミューゼス)や南門に隣接するカフェ からふね屋が利用できます。

お時間があれば、広大な「京都国立博物館」の敷地内にある「明治古都館」や正門などの美しい景観や彫刻、 噴水、茶室のある庭園をめぐりながら散歩するのもいいかもしれません。

風薫る5月、京都まで足をのばして、「京都国立博物館」で開催中の 「京都国立博物館開館120周年記念特別展覧会 海北友松」を観にいらしてみませんか?

刀に替えて絵筆を握り、圧倒的画力で戦国の世を生き抜いた孤高の絵師、海北友松の世界を楽しむことができるでしょう。

ゴールデンウィークのお出かけスポットとしてもおすすめです。

また、2017年7月25日から2017年9月3日まで、「特集展示 京都水族館連携企画 京博すいぞくかん」が開催されますので、 夏休みのお出かけスポットにいかがでしょう。

さらに、2017年10月3日 から2017年11月26日まで、絵画・書跡・彫刻・工芸・考古の各分野から、 歴史と美を兼ね備えた国宝約200件を一堂に会する、 「開館120周年記念 特別展覧会 国宝」が開催されますので、紅葉見物がてらお出かけになるのもおすすめです。









【赤ちゃん連れのお母様へ】
・「京都国立博物館」はベビーカーで入館できます。 (展示室など混雑の場合、ベビーカーの使用ができない場合が有りますので 抱っこひもなどの携帯をおすすめします。)
・おむつ交換ができるベビーシートは平成知新館1階、南門券売施設内、 庭園内のトイレに設置されています。
・授乳の際は、救護室内の授乳室(平成知新館1F/南門付近)が利用できます。





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京都国立博物館 明治古都館
(本館、重要文化財)

京都国立博物館 平成知新館(新館) 

京都国立博物館 平成知新館(新館)

「京都国立博物館開館120周年記念
特別展覧会 海北友松」
エントランスロビー

柏に猿図
海北友松筆
サンフランシスコ・アジア美術館(米国)
桃山時代 16世紀
Photograph©Asian Art Museum
of San Francisco

重要文化財 雲龍図
海北友松筆
建仁寺(京都)
 慶長4年(1599) 

重要文化財 花卉図屏風(右隻) 
海北友松筆
妙心寺(京都)
 桃山時代 17世紀

月下渓流図屏風 
 海北友松筆 
ネルソン・アトキンズ美術館(米国)
 桃山時代 17世紀
Photography by Mel McLean,
courtesy of the Nelson-Atkins Museum of Art

ミュージアムショップ

レストラン The Muses (ザ・ミューゼス)

京都国立博物館 景観

明治古都館・正門
(重要文化財)

授乳室


 



施設情報

京都国立博物館


住所:京都府京都市東山区茶屋町527  

TEL:075-525-2473
(テレホンサービス)

開館時間:
午前9時30〜午後6時
*金・土曜日は、午後8時まで
*入館は、閉館の30分前まで

休館日:
月曜日(当日が祝日の場合は開館)
年末年始

観覧料:
「開館120周年記念特別展覧会 海北友松」
一般 1500円 / 大学生 1200円 / 高校生 900円
中学生以下無料

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
京都国立博物館 をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:京都国立博物館

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