アート&カルチャー


第120回 牧野記念庭園・記念館
 Makino Memorial Garden & Museum
(東京都練馬区)



梅の花がほころび、桜の便りもちらほらきこえる弥生3月となりました。

花の季節の到来です!

そこで、今回は、花をこよなく愛した日本の「植物学の父」といわれる牧野富太郎博士(1862‐1957)の 居宅跡にひっそりとたたずむ練馬区立牧野記念庭園・記念館をご紹介しましょう。

牧野記念庭園:練馬区公式HP
http://www.city.nerima.tokyo.jp/annai/rekishiwoshiru/rekishibunkazai/bunkazai/bunkazaishosai/b051.html

牧野記念庭園は、牧野富太郎博士が1926年(大正15年)から1957年(昭和32年)に亡くなるまで の30年間を過ごし、博士が「我が植物園」と大切にした庭園です。

1958年に練馬区が区立公園として整備、以来一般公開されてきました。

2008年(平成20年)に老朽化による改修工事のため一時休園しましたが、 2010年8月には建築家・内藤廣氏設計により装いも新たにリニューアルオープンしました。

庭園には、スエコザサ、センダイヤ、ヘラノキなど300種類以上の草木類が植生し、 記念館では、常設展示をはじめ、様々な企画展が開催されています。

さて、現在開催されている企画展は、「服部雪斎 春の花を描く-牧野富太郎コレクションより」。早速 取材してきましたのでご紹介しましょう。

牧野記念庭園までのアクセスは西武池袋線大泉学園駅南口から徒歩5分。駅を出てバス通りを南へ進み、 牧野記念庭園前交差点を右へ入ってすぐの右手です。

オオカンザクラがゲートを彩る正門を進み、受付で来園者名簿に名前を書き込み受付を済ませましょう。 (入場無料)

フクジュソウやリョクガクバイなど早春の花たちに迎えられながらまずは、記念館へ。

常設展示室には、植物採集や研究のために博士が使用した道具や日用品、直筆の執筆原稿、植物に 関する書物、博士の採集した植物標本など博士の研究生活をうかがい知ることができる 貴重な資料が展示してあります。こだわりの外国製絵具や絵筆も展示されていて興味深いです。

また、牧野富太郎博士の生い立ちから日本の植物学の発展に寄与された生涯も紹介されています。

牧野富太郎博士は、1862(文久2)年4月24日に現在の高知県高岡郡佐川町に生まれました。 土佐の自然の中で、幼少から植物に興味を持ち、独学で植物の知識を習得。

1884(明治17)年に東京帝国大学(現在の東京大学)理学部植物学教室へ 出入りするようになります。その後、『日本植物志図篇』(1889)や『大日本植物志』(1900) などの刊行にもたずさわり、1889(明治22)年には日本ではじめて新種のヤマトグサに学名をつけました。

1940(昭和15)年に刊行された『牧野日本植物図鑑』は、現在でも、植物図鑑として広く親しまれています。

94年の生涯で収集した標本は約40万点、新種や新品種など約1500種類以上の植物を命名し、 日本植物分類学の基礎を築いた一人として知られています。

1939(昭和14)年、最後まで講師のまま47年間勤めた大学を退官後も日本全国を飛び回った博士ですが、 90歳をこえ山に採集に出かけられなくなったころからは大泉の自宅で研究にいそしんだそうです。

最後に牧野博士の写真のかかる美しい土佐和紙とサクラの標本で装飾された 趣のあるコーナーを鑑賞したら、企画展示室に向かいましょう。

企画展示室では、「服部雪斎 春の花を描く-牧野富太郎コレクションより」展が開催されています。 (2016年3月31日(木)まで)

江戸時代に作られた博物図鑑の傑作の一つ『目八譜』(もくはちふ)と題する貝類図鑑で知られる服部雪斎は 幕府の医学館や博物学の同好会に依頼されて動植物画を描きました。

今回の企画展では、牧野博士のコレクションの中からモクレンゲ、スイセン、ビオラ、サクラ、イチゴ、 モモなど春に咲く愛らしい花やクワイなどの植物画が展示されています。

また、『目八譜』の貝がらの輝きまで再現された作品は、映像で展示されていますので、お見逃しなく!

雪斎の精緻な筆致で細部まで描いた春の花々は必見です!

次は鞘堂に収まるありし日の牧野博士の研究生活を偲ぶことのできる 書屋展示室に向かいましょう。

博士が94歳の天寿を全うされるまで、研究、執筆のため篭ったといわれる 書斎と書庫が当時のまま保存されています。

簡素で質素なだけに一層博士の植物学に対する熱い思いが伝わってくるような展示です。

庭園には、「花在れバこそ吾れも在り」という顕彰碑や牧野富太郎博士胸像を取り囲む 博士を支え続けた奥様の名前をとって命名した「スエコザサ」、 高知の仙台屋という店の前で発見、命名したサクラ「センダイヤ」、「ヘラノキ」  などの珍しい植物も植生し見どころ満載!

気の向くまま、庭園を散策するのも楽しいことでしょう。

また、お時間があれば講習室で牧野博士関連ビデオを観るのもいいかもしれません。

気持ちの良い春の一日、東京の西の郊外、大泉学園駅からほど近い練馬区立牧野記念庭園・ 記念館にいらしてみませんか?

季節の花たちに癒され、繊細な植物画に感動し、牧野富太郎博士の植物学に対するパワフルな生き方から 学び、元気ををもらうことができるでしょう。

建築家・内藤廣氏設計の随所にこだわりのあるウッディな建物も建築好きの方には 魅力的かもしれません。

春休みのお出かけスポットとしてもおススメです。

また四季折々、季節の花に会いにおでかけになるのも楽しいことでしょう。





【赤ちゃん連れのお母様へ】
「牧野記念庭園・記念館」は ベビーカーで入園できます。 オムツ替えは記念館裏手にあるバリアフリートイレにオムツ替えシートが設置されています。



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牧野記念庭園

リョクガクバイ

牧野記念庭園記念館

常設展示室

企画展示室
「服部雪斎 春の花を描く-牧野富太郎コレクションより 」展
(2016年3月31日(木)まで)

「モクレンゲ」
服部雪斎 筆  個人蔵

書屋展示室


牧野富太郎博士胸像とスエコザサ

講習室・事務室










施設情報

練馬区立牧野記念庭園・記念館  

住所:東京都練馬区東大泉6-34-4

TEL:庭園: 03-3922-2920
   記念館:03-6904-6403

開館時間:
午前9時〜午後5時
(ただし、企画展は午前9時30分から午後4時30分まで)

休館日:
毎週火曜日 (祝日の場合は翌平日 )
年末年始(12月29日〜1月3日)

入場料
無料

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
練馬区立牧野記念庭園をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
練馬区立牧野記念庭園・記念館
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