アート&カルチャー


第129回 上野の森美術館
 The Ueno Royal Museum
(東京都台東区)



はらはらと散る木の葉に晩秋の風情を感じる頃となりました。

2016年も残すところあとひと月ですね。

今年もひと月に1館ママたちが楽しめるミュージアムをご紹介してきましたが いかがでしたでしょうか?

そして、12月、今年最後を飾るミュージアムが、東京の中心上野公園にたたずむ「上野の森美術館」です。

上野の森美術館
http://www.ueno-mori.org

上野の森美術館は、1972年に開館した公益財団法人日本美術協会が運営する美術館です。

実力のある若手作家を紹介する現代美術展、VOCA展を毎年主催している美術館として ご存じの方も多いことでしょう。

常設展示はしていませんがVOCA展や上野の森美術館大賞展、日本の自然を描く展といった公募展のほか、 定期的に独創的な企画展を開催しています。

現在開催中の展覧会が、この時期にピッタリ、ヨーロッパ近代絵画の名作が揃った 「デトロイト美術館展−大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち」。(2017年1月21日[土]まで)

デトロイト美術館展
http://www.detroit2016.com/

モネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、マティス、ピカソなどヨーロッパの近代絵画史上欠かせない 巨匠たちの名画が並ぶ超豪華ラインアップの美術展です。

取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

美術館までのアクセスは、JR上野駅公園口より徒歩3分、 東京メトロ・京成電鉄上野駅より徒歩5分ととっても便利!!

JR上野公園口を出て、信号を渡り、左手に進み道なりに公園に入るとすぐ左手に 美術館が見えてきます。

チケット売り場で、入館券を購入、早速展覧会場に進みましょう。

デトロイト美術館(Detroit Institute of Arts,通称DIA)は、 アメリカ合衆国ミシガン州・デトロイトに位置し、古代エジプト美術から現代美術まで 約65000点以上の作品を所蔵、年間約60万人が訪れるアメリカを代表する美術館のひとつです。

Detroit Institute of Arts(デトロイト美術館)
http://www.dia.org/

1885年に創立して以来、自動車業界の有力者たちからの資金援助を通じて、 世界屈指のコレクションを誇るまでに成長し、アメリカでゴッホやマティスの作品を初めて購入した 公共美術館としても知られてきました。

しかし、2013年7月、デトロイト市の財政破綻により存続の危機に陥ります。 そして、市の深刻な財政難により、収蔵する美術品の売却の可能性も心配されましたが、 国内外からの資金援助により、美術品は売却されることなく存続しました。

今回の展覧会では、危機を乗り越え、今なお美術館のコレクションの中核を構成している印象派、 ポスト印象派の作品を中心に、選び抜かれた52点を「印象派」「ポスト印象派」 「20世紀のドイツ絵画」「20世紀のフランス絵画」の4章に分けて展覧しています。

早速「第1章 印象派」から観てゆきましょう。

印象派は、18世紀から19世紀にかけてヨーロッパ各地で起こった産業革命や市民革命の影響を受け、 当時のフランス画壇の主流であったアカデミズム絵画に対抗し、 戸外に出向き田園風景を描く「バルビゾン派」や目にした現実のみを描くクールベの「写実主義」を経て 誕生しました。

戸外での制作を重視し、短く断片的な筆致、鮮やかで明るい配色、大胆な構図によって産業化や工業化により変貌する パリの街並み、競馬やバレエ、カフェなど市民の日常生活の一場面を切り取って表現しようとしたのです。

展示室に入ると、冒頭ピエール・オーギュスト・ルノワールの≪白い服の道化師≫が出迎えてくれます。

この作品は、ルノワールの7歳の息子ジャンをモデルにした肖像画といわれています。 たっぷりした光沢のある道化師の白い衣装、首元の柔らかな素材の襟飾りのオレンジ色が 優しく心を癒す、家族愛あふれる作品。

次に展示されているのが、ルノワールの特徴である豊満で健康的な裸婦像の中でも代表的な作品≪座る浴女≫、 さらに第一回印象派展開催の年に描かれた≪肘掛け椅子の女性≫。

続くエドガー・ドガの作品は、≪楽屋の踊り子たち≫や当時の都会生活をモチーフとした作品群です。

そして、ギュスターヴ・クールベが画家として認められようとサロンに作品を送り続けていた 若き日の秀作≪川辺でまどろむ浴女≫。 伝統的なアカデミックな表現に対抗し、肉体の現実的な量感、存在感を感じさせる 写実主義的な作品です。

続いての作品は、≪小道≫と題するカミーユ・ピサロの珠玉の名画。 第1回印象派展から欠かすことなく参加、田園風景や労働する農婦の姿を好んで描いたたピサロ。 この作品は、新印象主義による点描法を用いて緻密に制作された魅力的な作品です。

そして、続くクロード・モネの≪グラジオラス≫にも魅せられます。

庭を愛してやまなかったモネ。フランス・パリ近郊のジヴェルニーに、日本風の庭を造ったことはあまりにも有名。

蝶が舞い、花々が咲き乱れる庭を描いたこの作品、愛する妻と愛する庭をモチーフに描いた夢のように美しい作品です。

さて「第2章 ポスト印象派」では、「ポスト印象派」といわれるゴーギャン、セザンヌ、ゴッホ、 「ナビ派」のルドン、ボナール等が登場します。

この章では、ゴーギャンの≪自画像≫、セザンヌの≪水浴する人々≫、≪画家の夫人≫、≪サント・ヴィクトワール山≫など どれも見どころです。

が、なんといっても必見なのがフィンセント・ファン・ゴッホの≪自画像≫!

麦藁帽子を被り、青い画家用のスモックを着た姿を強烈な色彩と激しい筆触で描いた傑作!

アメリカの公的な美術館に収められた最初のゴッホ作品です。

このコーナーには、今回初公開のゴッホ作品≪オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて≫も展示されていますので、 お見逃しなく!

さて、次は2Fに進み「第3章 20世紀のドイツ絵画」を鑑賞しましょう。

このコーナーでは、デトロイト美術館のドイツ人館長ヴィルヘルム・R・ヴァレンティナーの時代に 収集された20世紀のドイツ絵画の中からとりわけ充実したドイツ表現主義の作品を中心に紹介されています。

「ブリュッケ(橋)」、「青騎士」など、第一次世界大戦からドイツとオーストリアで活躍した芸術家たちによる、 人間の内面を大胆な色彩や形態で表現した作品の“傾向”や“気分”の総称であった「ドイツ表現主義」は、 ナチス・ドイツによって「退廃芸術」と弾劾されたことにより、皮肉にも明確に規定されることとなったとか。

最初に展示されているのが、ワシリー・カンディンスキーの≪白いフォルムのある習作≫。 「抽象絵画の父」といわれるカンディンスキーの初期の作品です。

次に目が止まるのが、≪年老いた農婦≫と題するパウラ・モーダーゾーン=ベッカーの農民画です。

ブルーを基調に上部にリンデンの葉のグリーンを配し、大きな農婦の両手を中央に描いたインパクトのある作品。

さらに進むと、エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナーの≪月下の冬景色≫が展示されています。 画家のアトリエから眺める風景を描いた、自然に神秘性や崇高を感じるドイツ表現主義らしい作品。

この章では、日本初公開のオスカー・ココシュカの作品なども見どころです。

最後に展覧するのが「第4章 20世紀のフランス絵画」。

20世紀初頭のヨーロッパの美術は、「モダニズム」の流れの中に、フォーヴィスム、キュビスム、 プリミティヴィズム、表現主義、そして抽象など古典的な規範を覆す新しい表現が生まれました。

この章では、20世紀美術最大の二人の巨人、マティスとピカソをはじめ、フランスで活躍した 画家たちの代表作で1900−1930年のモダニズム絵画の流れを辿っています。

2Fでは、ファン・グリスの≪静物≫が異彩を放っています。スペイン出身のファン・グリスは、 ピカソとブラックに次ぐ、キュビスムの作家として「分析的キュビスム」から「パピエ・コレ」そして「総合的 キュビスム」へと作風を変えていきます。

この日本初公開の≪静物≫と題する作品は、「卓上の静物」をあたかもパピエ・コレであるかのように描いた構築的で端正な作品です。

次に1Fに移りましょう。

1F展示室には、初期作品、キュビズム、古典主義、表現主義のほか、さまざまな時代のパブロ・ピカソの作品6点が 展示されています。

1905年の≪アルルカンの頭部≫、から≪マヌエル・パリャレスの肖像≫、 総合的キュビスムの個性的な作品≪アニス酒の瓶≫、≪肘掛け椅子の女性≫、≪読書する女性≫、 1960年の≪座る女性≫までの肖像画が並んでいますので、ピカソの作風の変遷が観られるのも興味深いですね。

展覧会の最後を飾るのは、アンリ・マティスの≪窓≫と≪ケシの花≫。

色の魔術師といわれたマティスの傑作≪窓≫は、一見なにげない室内画ですが、構図の巧みさ、色彩のハーモニーの絶妙さに 魅了されることでしょう。

この作品は、アメリカの公共美術館のコレクションに初めて入ったマティスの作品です。

≪ケシの花≫は、赤いケシの花と黄色いグラジオラスが白と青の花瓶に生けられ、色鮮やかな屏風の模様と共に 打ち上げられた花火のように華やかな画面を構成していて楽しめます。

さらにアメデオ・モディリアーニの独特な男女の肖像画やシャイム・スーティンの≪赤いグラジオラス≫なども展示されていますので、 お見逃しなく!

「デトロイト美術館展―大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち」(2017年1月21日[土]まで)をたっぷり堪能したら、 ほっと一息1Fの「Cafe MORI」で美術展の余韻を楽しみながら、ティーブレークするのもいいかもしれません。 (展覧会カタログが販売されています。)

また、出口付近のミュージアムショップでは、展覧会カタログはじめポストカード、オリジナルグッズが色々取り揃えられています。

さらに「デトロイト美術館展―大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち」では、月、火曜日限定で、展示室内の撮影が可能です。 入館時に配布される作品リストに記載されている注意事項を厳守してお楽しみくださいね。

厳選された52点の名画で構成される展覧会、作品数からもお子さま連れでも楽しめる展覧会として最適かもしれません。 (混雑する土・日・祝日&撮影可能な月・火曜日を除く平日がベターかもしれません。)

アートファンもアート初心者も上野の森に囲まれた「上野の森美術館」で「デトロイト美術館展―大西洋を渡ったヨーロッパの名画たち」 (2017年1月21日[土]まで)を楽しんでみませんか?

お子さまからお年寄りまでヨーロッパの近代絵画を彩る巨匠たちの名画に接するまたとない機会です。お見逃しなく!

冬休みのお出かけスポットとしてご家族でお出かけになるのもおすすめです。









【赤ちゃん連れのお母様へ】
「上野の森美術館」にはベビーカーで入館できます。
(2Fに上がる際にはスタッフの方にお声がけください。)
オムツ替えや授乳に関しては、スタッフの方にご相談ください。






このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せくださいね。 お待ちしております。




上野の森美術館

上野の森美術館

≪デトロイト美術館内観≫
アメリカ・デトロイト美術館内
The Rivera Court Photo by Salwan Georges

≪白い服の道化師≫
ピエール・オーギュスト・ルノワール
1901-02
Bequest of Robert H. Ternnahill

「第1章 印象派」展示室風景


≪グラジオラス≫
クロード・モネ
c.1876
City of Detroit Purchase

≪水浴する人々≫
ポール・セザンヌ
c.1880
Bequest of Robert H. Ternnahill

≪自画像≫
フィンセント・ファン・ゴッホ
1887
City of Detroit Purchase

≪白いフォルムのある習作≫
ワシリー・カンディンスキー
1913
Gift of Mrs. Ferdinand Moeller

≪年老いた農婦≫
パウラ・モーダーゾーン=ベッカー
c.1905
Gift of Robert H. Tannahill

≪月下の冬景色≫
エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー
1919
Gift of Curt Valentin in memory of the artist on the occasion of Dr. William R. Valentiner's 60th birthday

≪静物≫
ファン・グリス
1916
Founders Society Purchase with funds from the Dexter M.Ferry, Jr.Trustee Corporation

右:≪窓≫
アンリ・マティス
1916
City of Detroit Purchase
左:≪ケシの花≫
アンリ・マティス
c.1919
Bequest of Robert H. Ternnahill

≪赤いグラジオラス≫
シャイム・スーティン
c.1919
Gift of Lydia Winston Malbin

「Cafe MORI」

 



施設情報

上野の森美術館


住所:東京都台東区上野公園1−2

TEL:03-3833-4191
   03- 5777- 8600(ハローダイヤル)

開館時間:10 : 00〜17 : 00(入場は閉館30分前まで)
*展示により変更される場合があります。

休館日:不定休
*展示により異なります。

入館料:展示により異なります。

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「デトロイト美術館展」

・開館時間  9:30−16:30(但し、毎週金曜日は9:30−20:00) *入館は閉館の30分前まで)
・休館日:会期中無休
・入館料:一般:1600円/ 高校・大学生:1200円/
 小・中学生:600円
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詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
上野の森美術館 をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
上野の森美術館
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