アート&カルチャー

第219回 浜離宮恩賜庭園  
Hama-rikyu Gardens
東京都中央区



梅雨を前に30度を超える夏日も出始めるなど、熱中症に注意が必要な頃となりました。

広大な青空と新緑を楽しみに出かけるのは今がラストチャンスかもしれません。

ということで、今回は「潮入の池」と二つの「鷹場」をそなえ、江戸時代には江戸城の「出城」としても 機能した徳川将軍家の回遊式庭園、「浜離宮恩賜庭園」を取材してきましたのでご紹介しましょう。

潮入りの池は、埋立地に海水を引き入れ潮の干満によって池の趣向を変える江戸期の海辺の庭園には よく用いられた作庭様式。

旧芝離宮恩賜庭園、清澄庭園、旧安田庭園なども江戸期には潮入の池をとり入れていました。

しかし、江戸に始まり明治、大正、昭和をへて現在も海水を引き入れているのは浜離宮恩賜庭園のみだそうですから 貴重な文化財庭園です。

その成り立ちは、承応3(1654)年徳川将軍家の鷹狩場に四代将軍・家綱の弟で甲府宰相の松平綱重が「甲府殿浜屋敷」「海手屋敷」 と呼ばれる別邸を建造したのが始まりです。その後は綱重の子綱豊(家宣)が六代将軍となるや将軍家の別邸となり、「浜御殿」と 呼ばれるようになりました。

以降歴代将軍により幾度かの造園、改修工事を経て十一代将軍家斉治世の頃に最も整備が進み、ほぼ現在の姿が完成されたといわれて います。

明治維新後は、皇室の離宮となり、名前も「浜離宮」と改名されました。1869(明治2)年5月には、外国人接待所として石造洋館である 「延遼館」が建設されました。「延遼館」は鹿鳴館が完成するまで、国の迎賓施設として利用されたとか。

大正期以降は関東大震災や戦災によって、御茶屋など多数の貴重な建造物が焼失、樹木も損傷してしまいましたが、 戦後の昭和20(1945)年11月、東京都に下賜され、整備の上昭和21年(1946)4月から「浜離宮恩賜庭園」として一般に公開され 現在に至っています。

そして、国の文化財保護法に基づき、昭和23年(1948年)12月には国の名勝及び史跡に、同27年(1952年) 11月には周囲の水面を含め、国の特別名勝及び特別史跡に指定されました。

さて、アクセスは、都営地下鉄大江戸線「築地市場」(E18)「汐留」(E19)・ゆりかもめ「汐留」下車 徒歩7分 JR・東京メトロ銀座線・都営地下鉄浅草線「新橋」(G08・A10)下車 徒歩12分と便利です。

今回は都営地下鉄大江戸線「汐留」駅を利用してメインエントランスの築地川と緑に囲まれた大手門口へ向かいました。

大手門口でチケットを購入、園内に進むと左手の「三百年の松」が出迎えてくれます。

これらの松は、今から約300年前の宝永6年(1709)、六代将軍徳川家宣が、この庭園を大改修したときにその偉業を顕彰して 植えられたと伝えられています。

樹高は高くはありませんが、太い枝を横に大きく張り出している立派な植栽です。

能楽を演じる舞台の背景にピッタリなマツですね。

さて、江戸の大名庭園の中でもとりわけ広大な浜離宮。中でも最大の見所は「潮入の池」と池の周辺に点在する「御茶屋」といわれる建築群。 早速目指して出発です。

途中の史跡を観ながら出発するとまず現れるのが内堀。

築地川から水門をへて水が引き込まれ、長崎や上方から船で運ばれてきた物資を江戸城に届けるための港湾施設。 荷揚げ用の石段が残されています。

次に目にとまるのが、「延遼館跡」の表示。1869年(明治2)に建てられた石造洋館建築の迎賓館施設跡です。 1869年英国第2王子のエジンバラ公の来日をきっかけに旧幕府時代に未完成だった石室を改造して内部装飾や家具設計を ジョサイア・コンドルがデザインしたそうですから華麗なものだったでしょう。

鹿鳴館が完成するまで国を代表する迎賓施設として使用されましたが、老朽化のため取り壊されたそうです。

次に現れる芳梅亭、花木園と休憩所を過ぎると緑が深くなり、まるで、森の中を歩いているよう。

しばし木漏れ日の中、森林浴を楽しんでいると徐々に目の前が開けてゆき、目前に青い空に広々とした潮入の池が展開する気持ちの良い景観が現れます。

池の中央には「お伝い橋」と名付けられた池の岸から小の字島と中島を結ぶ総延長約120mの橋が設置されているのが印象的。

ところで、潮入の池は、東京湾の海水の干満によって上下する水位に従って2つの水門を開閉し、 池の水を調節する仕組みで成り立っています。

池にはボラやセイゴ、ハゼなどが棲息、池の周囲に設置された岩や石には、ベンケイガニ、フナムシ、フジツボを観ることができるとか。

海辺の光景をみることができるだけでなく、現在は高層建築群を借景としているのもなかなかの見所です。

なにより潮風に吹かれながら池の中央を歩くのは最高!めったにない癒しの光景に違いありません。

さて、潮入りの池に点在する「御茶屋」とは、歴代の将軍達が賓客をもてなした施設です。

風景を楽しみながら食事をしたり調度品を鑑賞する他鷹狩の休憩所としての役割もはたしていました。

御茶屋の多くは戦災で焼失してしまいましたが、宝永4(1707)年に造られた「中島の御茶屋」は昭和58(1983)年、「松の御茶屋」は 平成22(2015)年、「燕の御茶屋」は平成27(2018)年、「鷹の御茶屋」は平成30(2018)年にそれぞれ歴史的資料に基づいて 復元され、往時をしのばせる姿で楽しませてくれます。

また、とりわけ興味深いのは、潮入の池に架かる「お伝い橋」。渡る途中幾度か曲折する、総檜造りのエレガントな橋です。 現在は池の北側入口付近だけですが、かつては中島へ続く橋全体が藤の花で覆われ橋を渡る人々の頭上を花々が飾っていたそうですから その華やかさはいかばかりか。その素敵なセンスに触れてみたいものです。

さて、「お伝い橋」に目を奪われますが、潮入の池北側に設置されている「御茶屋」群にも立ち寄りましょう。

まず「鷹の御茶屋」は、寛政7(1795)年頃に建設され、将軍が鷹狩りを行う際の、待合いや休憩所として利用されていたそうです。 茅葺屋根や、内部の土間叩きが特徴の、農家風の佇まいが特徴の建物。

建物裏手には、鷹狩りの際に鷹を飼育するための鷹部屋も付属され、建物裏手に廻ると鷹部屋や、説明板も設置されていますのでお見逃しなく!

次は右手岸辺にある「燕の御茶屋」。外からの見学ですが、内外装とも端正な佇まいの建物。

名前の由来は部屋の意匠に燕のデザインが使われていたからだとか。

さて「松の御茶屋」は十一第将軍家斉が鷹狩の際の休憩所として設置された建物。狩りの装束のまま入室するために土間が広くとられているなど 鷹狩に便利な間取りとなっています。

さて、御茶屋群の中でもとりわけ魅力的な建物は、「中島の御茶屋」です。

潮入の池の中島に位置し、池の情緒を様々に堪能できる施設。

明治天皇が第18代アメリカ大統領グラント将軍と会談した歴史的な場所でもあるそう。

現在は休憩スポット、和風カフェとしてお抹茶と和菓子のセットが提供されています。(有料・臨時休業あり)

さて次は鴨場に向かいましょう。鴨場は「庚申堂鴨場」と「新銭座鴨場」の2か所があります。

築造は、前者が安永7(1778)年後者が寛政3(1791)年。鴨場池には、幾筋かの引堀(細い堀)が設置され、小覗から鴨の様子をうかがいながら アワやヒエなどのえさとアヒルで引堀におびき寄せ小土手から鷹や網で捕獲するという猟を行っていたということです。

庚申堂鴨場には「小覗き」が設置され、説明ボードで鴨猟の詳しい説明がなされていて興味深いです。

最後に鴨場に向かう潮入の池の東側通路の脇にある御亭山に登ってみましょう。浜離宮恩賜庭園が俯瞰できるスポットとなっています。

さすがに江戸の初めに海を埋め立て人工的に造園された徳川将軍家のスケールの大きな庭園。

海水を引き入れた潮入の池と二ヶ所の鴨場では、将軍の舟遊びや魚釣、鷹狩や貴人の接待に使われ、さらに江戸城の「出城」としての機能も 果たしていたといわれています。

江戸の浜離宮庭園は将軍たちにフォーカスしたアクティブで贅沢なフィールド。

そのフィールド全体が文化財となっている浜離宮恩賜庭園にいらしてみませんか? 潮風にふかれながら江戸から続く文化に触れ素晴らしい景観を楽しむことができるでしょう。

 







【赤ちゃん連れのお母(父)様へ】
・「浜離宮恩賜庭園は」はベビーカで入園できます。
・おむつ交換できる多目的シートを設置しているトイレがあります。
*詳細は以下の浜離宮恩賜庭園HPかサービスセンターにお問い合わせ下さい。


このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
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浜離宮恩賜庭園 大手門橋


浜離宮恩賜庭園 大手門





三百年の松


延遼館跡


内堀



潮入の池



鷹の御茶屋




燕の御茶屋




お伝い橋



中島の御茶屋



松の御茶屋


鴨場・小覗



御亭山






施設情報

浜離宮恩賜庭園

住所: 東京都中央区浜離宮庭園1ー1

TEL:03-3541-0200
開館時間:午前9時〜午後5時
(入園は午後4時30分まで)
休園日:年末・年始
(12月29日〜翌年1月1日まで)

入園料:
一般    300円
65歳以上 150円
(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)
※小学生以下のお子様は保護者のお付添が必要です。



詳しくは直接お問い合わせいただくか
浜離宮恩賜庭園をご覧ください。

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