アート&カルチャー


第131回 日本民藝館
The Japan Folk Crafts Museum
(東京都目黒区)



きびしい寒気の中、梅のつぼみがほころび始めました。

凛とした大気、明度を増した陽光、ほのかな花の香り、 2月は、美しいものに会いに美術館散歩に出かけたくなる季節ですね。

そこで、今回は、東京・渋谷から京王井の頭線で二つ目、駒場東大前駅からほど近い アカデミックなエリアに静かに佇む「日本民藝館」をご紹介しましょう。

日本民藝館
http://www.mingeikan.or.jp/

「日本民藝館」は、「民藝」という新しい美の概念の普及と「美の生活化」を目指す民藝運動の本拠として、 1926年に思想家の柳宗悦(やなぎむねよし・1889-1961)らにより企画され、実業家で社会事業家の大原孫三郎をはじめとする 多くの賛同者の援助を得て、1936年に開設された美術館です。

初代館長の柳宗悦は、「正しい工芸の健全な成長」のためには、美しさの指標が必要であるとし、 「美の標準」を具体的に示す作品を公開したのです。

「日本民藝館」は柳宗悦の工芸の未来に向け蒐集した所蔵品と作品の美しさを活かすように設計された建物とが その美意識によって貫かれた独創的な美術館として知られています。

そのコレクションは、陶磁器・染織品・木漆工品・絵画・金工品・石工品・編組品など 日本をはじめとする諸外国の新古工芸品約17000点から構成され、年間4〜5回の展示替えが行われています。

現在開催されているのが、創設80周年特別展の最後を飾る「柳宗悦と民藝運動の作家たち」展(2017年3月26日[日]まで)。

取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

館までのアクセスは、京王井の頭線駒場東大前駅西口より徒歩7分。駅を出て、右手道なりに線路に沿って進み、 駒場通を直進、右手に大きくカーブすると右手に日本建築の伝統を活かしたどっしりとした 「庫造り風」デザインが印象的な建物が見えてきます。

こちらが、「日本民藝館本館」。道路反対側には「日本民藝館西館」が静かに佇んでいます。

ほころび始めた紅梅を横目に早速本館に入ってみましょう。

大きな玄関引き戸を開けると、目の前に存在感のある階段を中心に吹きぬけの玄関広間が眼に飛び込んできます。

玄関でスリッパに履き替え、大谷石が敷き詰められた玄関広間の床に上がり、左手受付でチケットを購入すると 玄関回廊の「柳宗悦と民藝運動の作家たち」の作品が出迎えてくれます。

今回の特別展では、民藝運動を牽引した河井寛次郎や濱田庄司をはじめバーナード・リーチ、芹沢_介、棟方志功の作品を 一堂に展覧。彼らに続く、片野元彦、舩木道忠、黒田辰秋、柳悦孝、金城次郎、鈴木繁男、岡村吉右衛門、島岡達三、 武内晴二郎、柚木沙弥郎、舩木研兒などの作品に加えて、柳宗悦の書や原稿なども展示されています。

全館にわたり、民藝美に触発された作家たちの作品を洗練された佇まいも共に鑑賞することができるなかなか贅沢な 展覧会です。

展示室の構成は、1階は、玄関が「柳宗悦と民藝運動の作家たち」、第1室「柳宗悦の仕事」、 第2室「バーナード・リーチの仕事」、第3室「柚木沙弥郎の仕事」、2階は、第1室「芹沢_介の仕事」、 第2室「河井寛次郎の仕事」、第3室「棟方志功の仕事」、第4室「濱田庄司の仕事」、新館大展示室 「柳宗悦と民藝運動の作家たち」となっています。

決められたルートをたどって見学するのではなく、自分の眼と心でものを直に観るということが何よりも大切であるという 柳宗悦の考えに則り、鑑賞順路は特にないそうですので、この日は、玄関回廊に展示されたバーナード・リーチ、 濱田庄司、河井寛次郎、富本憲吉などの作品を鑑賞したら、右手の第1室「柳宗悦の仕事」に進みました。

宗教学者として出発した柳宗悦には、作家としての作品はなく、そのコレクションと基本設計も手掛けた 「日本民藝館」が最大の作品。この展示室では、「工藝美論」や「朝鮮の工芸」などの自著の装幀や関連書籍、 「書 佛語」などが紹介されています。

次に2階へ向かうと、第1室は、「芹沢_介(1895−1984)の仕事」のコーナー。

柳宗悦の「工藝の道」を読み感銘を受けた芹沢は、沖縄の紅型風呂敷の色と模様に強く惹かれ 型染を生涯の仕事としたとか。ここには、彼の見事な「黄地松竹梅文着物」をはじめ、帯、のれん、和紙の暦、 本の装幀など魅力的な作品たちが並んでいます。

続いて、第2室「河井寛次郎(1890−1966年)の仕事」では、濱田を介して柳と親交を深めた河井の 色鮮やかな釉薬の作品が展示されています。

さて次は、回廊でバーナード・リーチの一番弟子であったマイケル・カーデューのガレナ釉の作品を観て、 第4室「濱田庄司(1894−1978)の仕事」に向かいました。

バーナード・リーチを介して柳と出会い、河井とは学生時代からの友人であった濱田は、 リーチとともに英国に渡り、帰国後栃木県益子町で作陶を開始しました。

この展示室では、「白釉紋押注瓶」をはじめ碗や鉢、土瓶など用に即した力強く安定感がありかつ端正な 秀作たちに出会えました。バーナード・リーチの素描作品とのコラボレーションも素敵!

第3室は、「棟方志功(1903−1975)の仕事」。 独特の作風で知られる棟方の版画の数々が展示されています。

日本民藝館で買い上げられたのを機に柳らと親交を深め、 柳を師と仰いで制作したため、棟方作品のコレクションのほとんどが初摺り だとか。発色の良い美しい棟方作品が展示されています。

さて、2階新館大展示室では、「柳宗悦と民藝運動の作家たち」と題し、 民藝運動を牽引した河井、濱田、リーチ、芹沢をはじめ その後に続く作家たちの作品が一堂に会していて壮観です。

バーナード・リーチの大皿や黒田辰秋の「化粧台 朱塗三面鏡」、 鈴木繁男、舩木道忠、武内晴二郎、金城次郎の陶芸、柳悦孝の染織など見どころ満載!

また、展示室中央奥には、「柳宗悦と民藝運動の作家たち」展ポスターに掲載されている写真と ほぼ同じテーブルセッティングでバーナード・リーチ、河井、濱田の陶芸作品が、壁面には、芹沢の「沖縄絵図」が展示され、 素晴らしい空間を形作っています。

さて、大展示室の「民藝運動の作家たち」の作品を鑑賞後は、1階第3室「柚木沙弥郎(1922−)の仕事」へ。

柳宗悦の思想と芹沢作品に啓発され染色家になった柚木の型染は斬新!近年は、パリのギメ東洋美術館など国内外で展覧会を 開催、90歳を過ぎた今なお旺盛な制作を続けているという作家の大胆な構図と色彩豊かな表現にパワーをいただきました。

この展示室では、「型染柘榴文布」、「型染幾何文飾布」、「型染釣舟文様帯地」「雛飾布」などモダンで 楽しいデザインの多彩な型染作品が展示されています。

館内には、ご紹介したほかにも2階回廊など随所に作品が展示され、展示ケースなどの家具や障子などの建具、壁紙などの内装も見事! ご自身の眼と心でご観覧くださいね。所々にベンチも設置されていますので腰をかけてゆっくりと雰囲気を楽しむこともできます。

さて、日本民藝館80周年記念特別展「柳宗悦と民藝運動の作家たち」展を楽しんだら、 1階ミュージアムショップ(推薦工芸品売店)を覗いてみるのもいいかもしれません。

「日本民藝館案内」、日本民藝協会発行の『民藝』、文庫化された柳宗悦の著作など関連書籍をはじめ、 全国から集められた新作工芸品などが多数取り揃えられています。

また、「日本民藝館西館」公開日には、旧柳宗悦邸の見学ができます。 栃木県から移築された石屋根長屋門の玄関、母屋の柳宗悦記念室、柳兼子記念室、食堂、客間などこだわりの内装も見どころです。 (西館公開日は「日本民藝館」HPでご確認ください。)

さらに、今回の特別展では、創設70周年記念事業として旧柳宗悦邸修復工事で発見された 「バーナード・リーチ、河井寛次郎、濱田庄司、柳宗悦司会 座談会」の興味深い映像作品も上映されていますので、 ご覧になるのもおすすめ!

冴えわたる青空の広がる2月、創設80周年特別展「柳宗悦と民藝運動の作家たち」展(2017年3月26日[日]まで)を 楽しみに「日本民藝館」を訪ねてみませんか?

極上の民藝作品の美しさに癒され、日本民藝館の洗練された佇まいにセンスを磨かれ、素敵な時間を過ごすことができるでしょう。

年間4〜5回の展示替えがありますので、四季折々リピートされるのもおすすめです。









【赤ちゃん連れのお母様へ】
「日本民藝館」は玄関で靴を履き替えます。 ベビーカーは玄関でお預かりいただけますので、だっこひもなどの ご用意をおすすめします。エレベータ―を利用されたい場合は受付でご相談ください。





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日本民藝館 

日本民藝館 

創設80周年特別展「柳宗悦と民藝運動の作家たち」
ポスター

流描皿
河井寛次郎
 1920-30年代
 径22.4p
日本民藝館所蔵

白釉紋押注瓶
濱田庄司
1961年
高25.8
日本民藝館所蔵

萬朶譜 梅の柵
棟方志功 
 紙本墨摺 
 1935年
縦42.6 p
日本民藝館所蔵

型染柘榴文布(部分)
柚木沙弥郎
1980年代
日本民藝館所蔵

日本民藝館西館(旧柳宗悦邸)

日本民藝館西館(旧柳宗悦邸)


 



施設情報

日本民藝館
(公益財団法人 日本民芸館)

住所:東京都目黒区駒場4-3-33 

TEL:03-3467-4527

開館時間:
10:00〜17:00(最終入館は16:30まで)

休館日:
毎週月曜日(但し祝日の場合は開館し翌日休館)
年末年始、陳列替え等に伴う臨時休館有り

入館料:
大人 1,100円 / 高大生 600円 / 小中生 200円

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西館(旧柳宗悦邸)
公開日:
展覧会開催中の第2水曜、第2土曜、第3水曜、第3土曜に公開
公開時間:
10:00〜16:30(最終入館は16:00まで)
※日本民藝館本館と開館時間が異なりますのでご注意ください。
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詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
日本民藝館 をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
日本民藝館
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