アート&カルチャー


第123回 五島美術館
 The Gotoh Museum
(東京都世田谷区)



真夏を思わせる陽の光が梅雨時ということを忘れさせる今日この頃。 鬱陶しいといいながら雨に咲く紫陽花に風情を感じるのは日本的感性でしょうか?

そんな日本の四季折々の風雅を表現してきたのが日本画かもしれません。

酷暑に向かう6月は、緑に囲まれたゆったりとした雰囲気の中、 すっきりと洗練された日本画の世界で癒されてはいかがでしょう。

そこで、今回は、東京・世田谷の閑静な住宅地に静かにたたずむ、 日本や東洋の古美術を中心に収蔵・展示する五島美術館をご紹介しましょう。

五島美術館
http://www.gotoh-museum.or.jp/

五島美術館といえば、国宝「源氏物語絵巻」を収蔵する美術館として有名ですね。

広大な庭園に建つ2棟のお茶室や、茶道具のコレクション展が開催されることから 茶道をたしなむ方には、お馴染みの美術館かもしれません。

さて、五島美術館は、東京急行電鉄株式会社の元会長・五島慶太(1882−1959)氏の構想で創設され、 1960年(昭和35年)東京都世田谷区上野毛(かみのげ)に開館しました。

そのコレクションは、五島氏が半生をかけて蒐集された古写経をはじめとする貴重な美術品。 『源氏物語絵巻』を筆頭に、国宝5件、重要文化財50件を含む日本・東洋の古美術品を中心とする 約5000件にのぼる作品で構成されています。

展示活動は、それらのコレクションを中心に年間6〜7回、そのうち特別展が1〜2回程度開催されています。

毎年春には国宝「源氏物語絵巻」、秋には国宝「紫式部日記絵巻」がそれぞれ1週間程度公開され、 展示作品は、絵画、書跡、茶道具、陶磁器、古鏡、刀剣、文房具などの収蔵品を中心に展覧会ごとに変わり、 特別展では、特色あるテーマの展覧会が開催されています。

2016年6月19日(日)まで開催されているのが、「館蔵 近代の日本画展」。 館蔵の近代日本画コレクションから「人物表現」を中心に、横山大観、下村観山、川合玉堂、上村松園、鏑木清方、 松岡映丘、安田靫彦、前田青邨など明治から昭和にかけて活躍した近代日本を代表する日本画家の作品約40点を展観する展覧会です。

早速取材してきましたので、ご紹介しましょう。

五島美術館へのアクセスは、東急大井町線(各駅停車)「上野毛駅」下車約5分と便利です。

上野毛駅北口を出て、環状8号線を渡り二つ目の四つ角を右折し住宅街を少し歩くと左手に五島美術館の表示が出ている 日本風の正門入口に到着します。

木々の緑に囲まれた吉田五十八設計の寝殿造の要素を現代建築に取り入れたデザインが印象的な本館入口を入り、 受付でチケットを購入、早速「近代の日本画展」が開催されている展示室1に向かいましょう。

展示室1前室には、重要文化財指定の「木造愛染明王坐像」が常設展示されています。

展示室1では、まず、右手から寺崎広業(1869−1919)の「寒山拾得」や横山大観(1868−1958)の「観音」、「達磨」などが 並べられています。

大観の「達磨」は、中国六朝時代の禅宗の祖達磨が、座禅修行をする様子を描いたもので、 大まかな筆致の水墨表現の岩肌と達磨の衣服を描いた細い線の対比が印象的な傑作です。

次に進むと女性の日常生活や平安時代の王朝美人をモチーフに格調高い作品を多く描いた 女流画家・上村松園(1875ー1949)の美しい人物画が2点展示されています。

月を眺める王朝貴族の女性を繊細な筆致と雅な色彩で描いた愛らしい作品「月下佳人」。

また、「上臈の図」は、色鮮やかな花模様の襟元がアクセントになった上品な色彩の衣装をまとい、 金彩の髪飾りと扇子、表情に高貴さが表れた貴婦人画です。

続いて、京都を中心に風俗画、美人画を描いた女流画家、伊藤小坡(1877−1968)の「虫売」。 女性の視点でなにげない日常を描いた心惹かれる作品。

そして、江戸文学や浮世絵の伝統を継承しつつ、新しい風俗画の世界を創造した画家、鏑木清方(1878−1972)の「雪」。

風が吹きつけ、粉雪が舞う中、傘を前かがみにさしながら進む女性を描いたなんとも風情のある美人画「雪」。 全体の構図や色彩、吹きかかった粉雪の繊細さ、袖のなびくさま、髪飾りなどなど魅力的な作品。

大型作品のコーナーには、寺崎広業の「夏のひととき」と題するひときわ華麗な作品が展示されています。 清楚な女性の背後を飾るのは朝顔や桔梗、女郎花、萩などさまざまな草花。 おしゃれな装いの女性のたたずまいもステキです。写実的で、上品かつ華やかな画面構成に魅了されるでしょう。

そして、次に展示されているのが川合玉堂(1873−1957)の「焚火」。 「第15回日本絵画協会・第十回日本美術院連合絵画共進会」で銀賞を受賞した作品。

狩野派の筆法と四条派の写実を融合した玉堂30歳の時の傑作!森の自然と素朴な生活の中の 3人の人物表現が素晴らしく、墨の濃淡で情景描写した若き玉堂の並々ならぬ力量を感じさせる作品です。

そして、鉄線描による独特の様式で格調高い歴史画を数多く描いた安田靫彦(1884−1978)の 「菊慈童」などの美しい作品群も展示されています。

「近代の日本画展」では、上記のほかにも近代日本を代表する画家たちの「人物表現」を中心とするさまざまな 作品が展示されていますので、お気に入りの作品に出会うことができるかもしれません。

また、展示室1には宇野雪村コレクションより硯や墨、印材、文房清供などの貴重な文房具も展示されていますので、 お見逃しなく!

展示室1を堪能したら、本館ロビーを横切り、展示室2に向かいましょう。

展示室2前室には、近代陶芸の優品が展示され、展示室2には、「横山大観の富士山」をテーマに大観の筆による、 ヴァラエティ豊かな富士山が展示されています。富士山の雄姿を上空から見下ろす視点で描いた「日本心神」や 桜と輝く富士山を描いた「耀八紘」の大作、四季の富士山を描いた作品などを鑑賞できます。

さて、たっぷり「近代の日本画展」(2016年6月19日(日)まで)を楽しんだら中庭に出て、庭園の目のさめるような緑のグラデーションを堪能しましょう。 庭園案内図を参考に、ルートをカスタマイズして庭園を散策してみるのもいいかもしれません。 (ベビーカーは、受付にお預けください)

五島美術館の庭園は、多摩川が武蔵野台地を浸食してできた「国分寺崖線」上に位置しています。 武蔵野の雑木林が多摩川に向って深く傾斜する庭園には、「大日如来」や「六地蔵」など 伊豆や長野の鉄道事業の際に引き取った石仏が点在し、「上野毛のコブシ」(東京都指定天然記念物)や ツツジ、枝垂桜など、季節ごとに多彩な花を咲かせるそうです。

また、散策路には明治時代に建てられた茶室「古経楼」(こきょうろう)や、 慶太翁が古材を使用して作らせた立礼席「冨士見亭」(ふじみてい)〈共に非公開〉があります。

さて最後に五島美術館では、2016年6月25日(土)から7月31日(日)まで「夏の優品展―動物襲来―」 が開催されます。

こちらの展覧会は、館蔵品の中から、絵画や工芸に表された様々な動物の姿を一堂に紹介します。 愛らしい鳥たちや小動物、ほのぼのとした牛・馬・水辺の生き物など、 動物たちの造形は、豊穣や栄達、そして吉祥などを願う象徴でもありました。

重要文化財の「梅花小禽図」や文房具の「辰砂魚形水滴」など古代から近代までの名品約70点を 展観されるそうです。(プレスリリースより)

こちらもぜひお出かけください。夏休みのお出かけスポットとしてもおすすめです。

受付に隣接するミュージアムショップには展覧会図録をはじめ、ポストカード、「国宝源氏物語絵巻」、 「国宝紫式部日記絵巻」グッズ 、茶道具コレクショングッズ、 手ぬぐいやポーチなどのオリジナルグッズなど豊富な品々が取り揃えられています。

6月の一日、世田谷の上野毛駅からほど近い「五島美術館」にいらしてみませんか?

「近代の日本画展」(2016年6月19日(日)まで)の洗練された作品たちでセンスが磨かれ、緑豊かな庭園で癒され、 ステキな時間を過ごすことができるでしょう。

本物の作品に接することで、日本人の美意識の繊細さや色彩感覚、空間感覚などのセンスに気づき、近代の日本画の 様々な魅力に目覚めるかもしれません。

四季折々のお出かけスポットとしてもおすすめです。











【赤ちゃん連れのお母様へ】
「五島美術館」はベビーカーで入館できます。(庭園にお出になるときは ベビーカーは受付にお預けください。従って抱っこひもなどをご用意されることをおすすめします。)
オムツ替えはオムツ替えシートが設置されているバリアフリートイレが利用できます。


このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せくださいね。 お待ちしております。





五島美術館

本館・中庭

達磨
 横山大観筆
大正12年(1923)作

上臈の図 
上村松園筆
  昭和12年(1937)頃作

夏のひととき
寺崎広業筆
  大正時代・20世紀

焚火
川合玉堂筆
  明治36年(1903)作

展示室2「横山大観の富士山」

庭園案内図

茶室 小経楼

「夏の優品展―動物襲来―」
重要文化財 梅花小禽図 
伝 馬麟筆 南宋時代・13世紀

「夏の優品展―動物襲来―」
辰砂魚形水滴
(宇野雪村コレクション)
李朝時代・19世紀







施設情報

五島美術館   

住所:東京都世田谷区上野毛3-9-25     

TEL:03-5777−8600(ハローダイヤル)

開館時間:午前10時〜午後5時
(入館は午後4時30分まで)

休館日:毎月曜日
展示替期間(2016年6月20日〜24日)

入館料:一般 1000円/高・大学生 700円
中学生以下無料

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
五島美術館をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
五島美術館
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