アート&カルチャー


第128回 京都鉄道博物館
 Kyoto railway museum
(京都市下京区)



深まりゆく秋に旅心を誘われる頃になりました。

日本列島を縦断する紅葉前線を楽しむ旅には車窓を楽しめる鉄道が最適! 秋旅には鉄道が似合います。

そして11月の紅葉の名所といえばなんといっても京都!

しかし、紅葉の美しい寺社巡りも素敵ですが、小さいお子様にはちょっと退屈 かもしれません。

そこで、今回は、ママもキッズもご家族みんなで楽しめる京都の新名所をご紹介しましょう。

京都市下京区観喜寺町、JR京都駅からもそう遠くない梅小路公園に隣接する地に、 今年(2016年)4月にオープンした「赤ちゃん連れでも楽しめるミュージアム」にぴったりな 「京都鉄道博物館」です。取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

京都鉄道博物館
http://www.kyotorailwaymuseum.jp

その運営は、西日本旅客鉄道(JR西日本)および公益財団法人交通文化振興財団。

基本コンセプトは、「地域と歩む鉄道文化拠点」。京都の方々はもちろん国内外からのビジターが お子さまから大人まで楽しみながら鉄道の歴史・技術・安全・文化を学べるミュージアムです。

国内最大級の53両もの鉄道車両や本物の蒸気機関車が牽引する SLスチーム号の体験乗車をはじめとする「見る」、「さわる」、「体験する」を重視した 充実した展示内容が魅力!

さらにうれしいことに、京都の街を背景に行き交うさまざまな列車を眼下におさめるスカイテラスや 電車の見えるレストランなど子鉄、ママ鉄にはたまらない施設です。

取材してきましたので、早速ご紹介しましょう。

博物館までのアクセスは、京都駅前の北口バス乗り場より「梅小路公園・京都鉄道博物館前」または、 「梅小路公園前」下車が便利です。

バス停で下車し、梅小路公園に入り表示に従って進むと高架の先に、エッジのきいたスタイリッシュなデザインが印象的な 建物が見えてきます。こちらが京都鉄道博物館。

エントランスホールの券売機でチケットを購入、入館すると、早速、3両の車両が出迎えてくれます。 左から、C62形蒸気機関車、日本初の長大編成電車であるクハ86形1号車、初代新幹線電車である21形1号車です。

エントランスホールと本館を結ぶ全長約100メートルのプロムナードには、前記の3両のほか日本の鉄道の高速化を 牽引した代表的な車両が編成の形で展示されています。

ブルートレインの食堂車も展示され、お弁当も販売されていて、車内で食事ができるようなサービスもあります。

さて、本館入口をかざるのがJR西日本を代表する車両たち。左から流線形のフォルムが人気の 新幹線電車、500系521形1号車、中央が世界初の昼夜兼用電車として本州と九州を走る特急で活躍したクハネ581形35号車、 そして主に北陸特急で活躍したボンネット型スタイルが特徴のクハ489形1号車です。 なぜかオ―ラのある車両たち。迫力満点の展示です。

本館の展示は、1F「T鉄道のあゆみ」、「U車両の仕組み」、「V鉄道の施設」、2F「W生活と鉄道」、 「X運行のしくみ」、鉄道ジオラマというテーマで構成されています。順に見てゆきましょう。

「T鉄道のあゆみ」は、蒸気機関の発明から鉄道の開業、鉄道網の広がりと発展など 鉄道の歴史と変遷が実物や映像、写真などの展示方法で、15のトピックに沿って紹介されているコーナーです。

鉄道の歴史は、1825年英国のストックトン〜ダーリントン間で世界初の鉄道が開業したことで始まりました。その後 アメリカ、フランス、ドイツ、ベルギーなどの諸国へ ひろがっていきます。

日本では、開国とともに鉄道や蒸気機関車の研究が盛んになり、1872年に新橋〜横浜間の鉄道が開業されたことで、 人々の生活を一変させました。

実物展示されている「230形233号機」は、1902年(明治35)から41両が製造されたタンク式蒸気機関車で、大阪の 汽車製造で製造された最初の国産量産型蒸気機関車。国の重要文化財指定への答申を受けている鉄道記念物です。

次に目を引くのが、「鉄道の黄金期」に東京〜神戸間で活躍した特急「燕」のテールマークや特急「富士」のテールマーク。 「夢の『超特急』誕生と特急網」に関する展示など。

また、「高度成長を支えた人々が行き交った駅」と題し、昭和の駅舎と駅前広場の再現模型も展示されていて、 レトロな趣で楽しいです。

さて、次の「U車両の仕組み」コーナーでは、鉄道の主役である車両の魅力が紹介されています。

車両をかさ上げ展示し、普段は見ることのできない角度から車両の構造を観察できるコーナーもあります。

かさ上げ展示に選ばれたEF66形35号機は、東海道・山陽本線の高速貨物列車の牽引を中心に、 寝台特急列車も牽引したJR貨物より譲渡された電気機関車です。いかにも力がありそうな車体!

機関車の真下を歩きながら車両に搭載された状態の主電動機(モータ−)や動力台車などを見てみましょう。

そのほかにもこのコーナーでは、SLや電車、客車、貨車など車両の種類、蒸気・ディーゼル・電気といった動力のしくみなどを実物展示を中心に 紹介しています。

さて、「V鉄道の施設」は、線路、踏切、信号などの設備、トンネルや橋などの施設、衝突を回避するシステムなど鉄道の 運行に必要な設備機器やシステムを紹介するコーナーです。

車両を安全に走行させるための検査・修繕は、短期間で効率よく行う必要があるため、保守用の車両が使用されることもあります。 このコナーではそれら保守用車も紹介されています。

また、信号・閉そく・ポイントの連動のコーナーでは、全て列車を安全に走行させるための古くからあるルールと設備。 普段あまり意識したことがない、様々な種類の信号機とその役割にも驚くことでしょう。

さて次は2F「W生活と鉄道」と題する展示に向かいましょう。

このコーナーでは「鉄道と文化」、「物を運ぶ」、「列車に乗ろう」、「関西の鉄道」、「京都の鉄道」をテーマに展示されています。

「鉄道と文化」では、鉄道に関する代表的な食文化である駅弁や食堂車を紹介していたり、「列車に乗ろう」では、日常生活の中で、 普段何気なく利用している駅設備の機能などを模型を使って紹介しています。 「マルス(旅客販売統合システム)」端末を使った列車の座席予約作業を体験することもできます。

さて、「X運行のしくみ」では、運転士の訓練でも使用される運転シミュレータによる運転士の仕事体験や、多くの列車を安全に運行するためのバックアップシステムの 役割としくみを運転体験などを通して理解できる展示です。

運転シミュレータのコーナーでは、「運転士のおしごと一日体験」と題し、実物の運転台を使用した精巧なシミュレータにより 新幹線と在来線の運転が体験できます。お時間あればトライしてみては?(整理券が必要)

また、「複数の列車をコントロールする」コーナーでは、山陽新幹線CTC表示板を前にクイズに挑戦するのもいいかもしれません。

さらに、「列車を安全に走らせよう 」のコーナーでは、鉄道の安全を守る役割を持つ「ATS」や「ATC」といったシステムのしくみを 紹介しています。模型による運転体験を通して、楽しみながら安全について学ぶことができるでしょう。

企画展示室では、「The Sleeper Train〜寝台列車の軌跡〜」展が開催されています。(2017年1月31日[火]まで)

1900年(明治33年)私鉄の山陽鉄道(現在のJR山陽本線)が食堂車と寝台車の 合造客車を導入し、日本における寝台車の運用の歴史が始まりました。

昭和中期にはブルートレインが登場、その後トワイライトエクスプレス、カシオペアの列車を楽しむ豪華な寝台列車も登場し、近年では2013年 クルーズトレイン「ななつ星in九州」の運行が開始、旅を楽しむための列車である「TRAINSUITE四季島」(JR東日本)、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(JR西日本)の運行も2017年に開始される予定です。今回の企画展では日本における寝台列車の軌跡と京都鉄道博物館で保存・展示している 寝台車両について紹介されています。企画展もお見逃しなく!

さて次は、いよいよお子さまに大人気の鉄道ジオラマのコーナーです。(整理券の必要な場合有り)

駅やトンネル、橋梁などの鉄道施設を中心に、模型で制作されたジオラマ上を実物の80分の1(新幹線電車は87分の1)サイズの さまざまな鉄道模型車両(HOゲージ)が走行します。

この鉄道ジオラマは、すべての線路の合計が1000mを超える日本でも最大級の鉄道ジオラマ。 走行車両は、蒸気機関車から新幹線電車まで、また、JR西日本だけでなくJRグループ各社や私鉄の車両も走行しているので、 見覚えのある車両を探してみるのも楽しいことでしょう。

本館2Fには、ファミリーやお子さま同士で遊べる「キッズパーク」も設置されています。 W7系の大型模型、鉄道乗り物に関するおもちゃや絵本、知育玩具などが取り揃えられ、ベンチも多数配置されていますので、 ほっと一息ご家族でくつろぐことができるスペースです。

さて次は、本館3Fに上がってみましょう。3F南側には、気持の良い屋外展望デッキが設けられています。 京都のランドマーク「京都タワー」や世界遺産「東寺」の五重塔など京都の街を一望しながら 眼下を行き交うJR京都線や東海道新幹線など多くの車両の走行風景を楽しむことができます。

絶好のビューポイントですので、素敵な写真がとれるかも。

見学の最後は、本館2Fから連絡デッキで、屋外に展開する扇形車庫と「SLスチーム号」体験乗車に向かいましょう。 連絡デッキからは、「扇形車庫」や転車台、21線(20庫、21線)の引き込み線などの全貌を眺めることができます。

扇形車庫には京都鉄道博物館が誇る明治から昭和にかけて活躍した蒸気機関車20両が展示されていて壮観! うち8両は動態保存車両だとか。

車庫は、1914年(大正3)に建設された現存する最古の鉄筋コンクリート造りの機関車庫として 国の重要文化財に指定されています。

20両の美しい蒸気機関車たちとともに必見です!

また、かたわらには本物の蒸気機関車が牽引する「SLスチーム号」ののりばがありますので、 体験するのも楽しいでしょう。(「SLスチーム号」の体験乗車には乗車料金が必要)

白い蒸気を吐き出し、汽笛を鳴らす蒸気機関車は迫力満点! 実際に営業線を走っていた蒸気機関車が運行し、京都鉄道博物館の開業に合わせて作られた SLスチーム号のかわいい客車に乗って、貴重な旅の思い出を作っては?

さらに屋外では、大正時代を代表する建築様式のひとつトラス構造を残すトワイライトプラザ(旧京都駅上家)やポイントなどの屋外展示物も見ることができます。

鉄道に関する様々な充実した展示を満喫したら、ランチやカフェタイムは、本館2Fのレストランがおすすめ!

約250席の広く明るいレストランでは、窓から京都の街並みを背景に東海道新幹線やJR京都線が行き交う風景やホンモノの貨物駅風景を楽しみながら 豊富なメニューが楽しめます。

また、旧二条駅舎内には、ミュージアムショップが設置されていて、公式ガイドブックはじめ鉄道関連本やオリジナルアイテムが 豊富に取り揃えられています。おみやげさがしにもgood!

鉄道ファンはもちろん、鉄道初心者も秋の一日紅葉を楽しみがてら、京都鉄道博物館にいらしてみませんか?

蒸気機関車から新幹線までの鉄道の歴史に思いをはせたり、動くSLに乗ったり、最新の鉄道システムにふれたり、ジオラマを見たり、 貴重な体験ができ、お子さまとの会話も弾むことでしょう。

日本が世界に誇る鉄道技術や文化に興味を持つようになるかもしれません。

京都鉄道博物館は日本の鉄道文化の宝庫、とても一回では見て回れません。 小さなお子様からお年寄りまで楽しめるミュージアムとして四季折々リピートされるのもおすすめです。











【赤ちゃん連れのお母様へ】
「京都鉄道博物館」にはベビーカーで入館できます。
・オムツ替え:多目的トイレにオムツ交換台が設置されています。
・授乳室:館内各所に、粉ミルクを作るためのミルクポットやおむつ交換台のある授乳室が設置されているので安心です。
・ベビーカーの貸出:エントランスホールにて無料でベビーカーを貸し出しています。(台数に限り有り)
・キッズパーク:ご家族やお子様同士で自由に遊べるスペース。窓からは嵯峨野線を走行する列車を間近に見て楽しむことができます。





このコーナーでは、お子様連れで楽しめる皆さまお気に入りの ミュージアム情報を募集しています。 お問い合わせフォームから、是非お寄せください。
また、このコーナーへのご意見・ご感想もお気軽にお寄せくださいね。 お待ちしております。




京都鉄道博物館

プロムナード

本館入口

本館1F 「T 鉄道のあゆみ」
230形233号機(重要文化財・鉄道記念物)

本館1F「T 鉄道のあゆみ」
高度成長を支えた人々が行き交った駅

本館1F 「U 車両のしくみ」
EF66形35号機(右)

本館1F「V 鉄道の施設」
信号機の種類   

本館2F 「X 運行のしくみ」
山陽新幹線CTC表示板


本館2F 企画展
「The Sleeper Train〜寝台列車の軌跡〜」
 

本館2F 鉄道ジオラマ

本館2F キッズパーク

本館3F スカイテラス

扇形車庫

「SLスチーム号」体験乗車

本館2F レストラン・休憩所
(画像提供 京都鉄道博物館) 

旧二条駅舎(ミュージアムショップ・出口)




施設情報

京都鉄道博物館


住所:京都市下京区観喜寺町

TEL:075-323-7334(代)

開館時間:10:00〜17:30(入館は17:00まで)

休館日:
毎週水曜日・ 年末年始(12/30〜1/1)
*祝日および春休み(3/25〜4/7)、夏休み(7/21〜8/31)は開館
*荒天時などの場合には臨時休館

入館料:
一般 1,200円  /大学生・高校生 1,000円
中学生・小学生 500円  /幼児(3歳以上)200円

詳しくは、直接お問い合わせいただくか、
京都鉄道博物館 をご覧ください。

*取材協力・掲載許諾:
京都鉄道博物館
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