第 11 回 シャンボール城(Château de Chambord )



”Flânerie ”(そぞろ歩き)第11回目は、いつもと少し趣向を変えて、パリから少し離れたロワール地方に向かいます。

パリがセーヌ川と共にあるように、今回巡るロワール地方は全長1000キロ以上に及ぶ大河ロワール川とその支流とともにある肥沃な土地と優しい光に満ちたエリアです。

その豊かな風土を背景に多くの王侯貴族が城館を建て、芸術家たちが参集しました。

流域には大小80もの古城が点在しています。それらは、中世に外敵を防御するために作られたお城とフランスルネッサンス以降に造られた優美な館に大別できます。

前者ではシノン城など後者ではシャンポール城やシュノンソー城が有名。

今回そぞろ歩くのは、優美なお城の中でも飛び切り大規模かつ美しいシルエットが魅力のシャンボール城です。

シャンボール城(Chateau de Chambord )
http://www.chambord.org/



1981年、「シャンボールの城と領地(Chateau and Estate of Chambord)」としてユネスコの世界遺産に登録されていましたが、2000年には、指定範囲が拡大され、シュリー=シュル=ロワールからシャロンヌまでの約200キロのロワール渓谷(Val de Loire entre Sully-sur-Loire et Chalonnes)の一部としてより広範囲に登録されています。

パリから南西方向に約250キロほど走ると、緑の森と田園に囲まれたシャンボール城の広大な領地に到着します。パーキングからゆっくりと遊歩道を進むとお堀の向こうに両翼を広げた鳥を思わせる優美なお城が見えてきます。



16世紀はじめにフランソワ1世の命により着工され、25年の歳月をかけて完成されたという壮麗な建物です。

設計はドメニコ・ダ・コルトナ。当初の狩猟のための小さなお城から幾度となく改装され巨大化していったとか。

レオナルド・ダ・ヴィンチも設計に関与していたという説もあります。



正面入り口にはフランスの国旗が。目をあげれば、多数の装飾豊かな尖塔が林立している印象的なファサードが目に飛び込んできます。

このシャンボール城は中央の本丸と4つの巨大な塔から成っています。本丸は大きな塔が2基と、大きな前壁から形作られるという複雑な構造になっています。

また、ヴォールト建築の直線の廊下が4本直角に交差している堅固な構造の建物です。

お城の中には、部屋が440、暖炉が365、階段が74あることからもその規模の大きさが分かるというもの。

そして、お城の前の広大な芝生の先にはソロ−ニュの深い森が広がっています。



この建物の建築上の見所の一つに、二重螺旋の階段があります。

二つの階段を使えば、相手に出会うことなく3階まで昇り降りが可能というもの。



屋根や塔の華麗な装飾を見ながら屋上のテラスに立てば、お城の周囲の約52.5平方km(13,000エーカー)に及ぶ森林公園の広がりが眺められます。31km(20マイル)の壁で囲まれた禁猟区にはアカシカが生息しているそう。



シャンボール城には、敵からの防御のための構造はなく、壁や塔、内部の華麗な装飾ばかりが目にとまります。

建築様式は、基本的に、窓や外廊下、屋上の広大なオープンスペースなど、イタリア・ルネサンス様式に基づいているといわれます。

しかし、フランスの中では、比較的温暖といわれている中央フランスのロワール地方の気候に、このスタイル適していたのでしょうか?

また、当時城主は頻繁に転居したため、備え付けの家具はなく家財道具一式を持ち歩いていたとか。そのためか、外見の華麗さに比べ室内はあっけらかんと簡素そのもの。



お城の背後には野外イベント用の客席が設えられています。夏にはライトアップされたお城を背景にさまざまな催しが行われるのでしょう。

「フランスの庭」と親しまれているシャンボール城は、ロワール川流域でも広大な公園とともにかっこうのお散歩スポットですね。



まさにお城の中のお城! ロワール地方の豊かさを象徴するかのようです。

また、秋は、丁度ジビエのシーズン。
付近にはジビエ料理やロワールワインを楽しめるかわいらしいレストランが点在していますので、ランチにいらしてみるのもおすすめです。



ロワール川流域の豊かさをより実感されることでしょう。