特集: 極東ロシアの小さな村
第1回 クラスニヤール
極東ロシアにクラスニヤール村という小さな村があります。
この村のあるアムール川(黒竜江)の支流ビキン川の流域に広がるのが
タイガと呼ばれる森の広がる地域です。
ここは「ロシアのアマゾン」としても知られていて言わば地球上に残され
た数少ない森林地帯の一つであり貴重な野生のアムールトラの生息域でもあります。
私がこのクラスニヤール村を訪れたわけは、「タイガからのメッセージ」という1本の映画に
他なりません。
地図で見ると北海道の稚内から緯度に沿って西側に移動したところがこのロシア極東地域ですから
まさに日本のお隣に位置します
映画の中ではその大自然の様子と共にそこで暮らす先住民ウデヘ族の人たちに深刻な森林の伐採や民族の存続、
若者の都会への流出といった様々な問題が降りかかる様子も描かれていていました。
さらに、クラスニヤール村を流れるビキン川の栄養豊富な流れがアムール川へ注ぎオホーツク海から日本の三陸漁場にまで
影響を与えていることもわかりました。
(シホテ・アリニ山脈→ビキン川→ウスリー川(烏蘇里江)→アムール川(黒竜江)→間宮海峡・オホーツク海→太平洋・三陸海岸
これが長い流れの軌跡です。)
こんなに情報のあふれる社会に暮らしていて、あらゆる場所で自然保護やサスティナブルという言葉を耳にしていながら、
自分は日本のすぐ隣にある場所でそんな事が起こっているのも知らなかった。そして3・11以降、
誰もが抱いたこれから私たちはどうやってこの日本で生きていくのか?
共存していくのか?という本来は人間が常に考えていなければならなかった事の答えがこの場所にあるかもしれない、
いえ…答えはないかも知れないけれど一目その場所を自分の目で見てみたい、
見たら自分の中で何かが変わるかもしれないという気持ちが芽生えたのです。
はじめてクラスニヤール村を訪れたのは2月末。成田空港からハバロフスクへ2時間55分、
さらに車で8時間走ります。8時間の道のり前半は道が良いのですが後半はかなり状況の悪い山の
雪道を走ります。
村の人口は650前後、その中には村に籍をおいて都会の学校で学んでいたり、都会に住んでいたり、
兵役についていたりする人も含まれるので、実際の村の人口はもう少し減ります。
村の人々は役場の職員、売店の店員、学校の先生、郵便局員、消防署員、先住民族組合といった職業につくか+
狩猟と畑を耕すことで生計を立てています。「株式会社ビキン」という会社もあるそうです。
実際の生活は奥さんが学校の先生で旦那さんは猟師、両方が空いた時間で畑を耕す、
といったようにどの家庭にも狩猟と畑での作業、即ち食べるための労働は必須となるわけです。
私たちのような旅行者や周辺の調査に訪れる人は家庭にホームステイさせてもらうか、
2014年にオープンした村の博物館の2階にある「クラスニヤール村のホテル」自炊の宿泊施設に泊まります。
ホームステイやホテルの宿泊代、夏の間ビキン川で釣りを楽しむキャンプ客たちのガイドを務めることも、
この村の人たちの現金収入元ということになります。
私がホームステイさせていただいたのは、ヴォ−バさん ナターリアさんご夫妻のお家。
お二人には2人の娘と息子さんがいますが今はもうこの村ではないところで暮らしています。
ナターリアさんは少しだけ英語がわかるのでロシア語の解らない私でも身振り手振りを交えながらかなり良い感じで
コミュニケーションができます。ヴォ−バさんは元々技術者で村に電話線を引いたりインフラの整備をしていたそうですが、
ある時山火事を消しに行ってたくさん煙を吸い込み肺を悪くしてしまいました。今は家でのんびりと体に向き合いながら暮らしています。
奥さんのナターリアさんは実は元クラスニヤール村の村長、私たちの滞在中もテキパキと家事や世話をやきながら
村役場での仕事をこなします。まさにロシアの肝っ玉母さん!村の自治について熱く語る場面もあります。
はじめてのロシアで私はこのとにかく明るく温かいウデヘ族の血を引くご夫婦にお世話になりました。
ウデヘ族は極東ロシア地域に住む少数民族の一つで、現在ウデヘ族を名乗る人は1600人台と言われています。
この場合のウデヘ人とは...現在のロシアの法律では、出生証明書やお役所に届け出る書類に自分が○○族であると考える人は
その民族を名乗ることができるようになっていて実際にウデヘ人の血縁が薄かったり混血が進んでいたり、
ウデヘ族とは血縁がなくても自分がそうであると思えば胸を張って私はウデヘ人です!と名乗ることができるのです。
この人達の中には実際にそういったマインド-ウデヘ人も含まれることになります。
私も今ではすっかりウデヘの人たちに魅了されているのでお役所に届けないまでも四分の一位はウデヘ人です!
と名乗りたい気分です。
日本人に馴染みのあるところとしては1975年黒澤明監督の「デルス・ウザーラ」という映画です。
当時ロシア地図の中でも空白地帯であった極東地域の地図を作るためにこの地域を訪れた探検家の
アルセーニエフが勇敢で知己に富んだナナイ族の猟師デルス・ウザーラをガイドとして同行させた冒険の実話ですが、
そのナナイ族と並び称されるのがウデヘ族で民族衣装や生活形態も良く似通っていますし、
実際にアルセーニエフがクラスニヤール村を訪ねた記録があったり、デルス・ウザーラ自身がウデヘ族だったのではないかと
いう推測もあります。
これから1年間をかけて彼らのことそして彼らの森のことをこの場を借りて伝える事ができるのはとてもうれしい事です。
この日本で起きていることと、近くて遠いロシアの小さな村で起きていることは必ずしも無縁でないばかりか、
時々恐ろしく似通っていたり、むしろ同じ問題がより深刻に生活や命に直結して彼らの身の回りに差し迫っているのは
申し訳ないと感じることすらあります。
お隣の国の仲間として、同じ地球を共有する仲間として私の見てきたことに共感していただけたら幸いです。
【今月のクラスニヤールの人】
セルゲイ・カルーギン(43歳)
村の中でも腕利きの猟師
「タイガのターミネーター」
***タイガ関連情報***
≪ドキュメンタリー映画『タイガからのメッセージ』上映会@神楽シネマ≫
http://www.abovo.jp/wp/taiga//taiga/
◆日時◆ 2014年12月19日(金)
◆時間◆ 19:00 〜 22:00(18:30開場)
◆入場料◆ 2,000円(事前予約制)※お申込みいただいた方にメールにて詳細をご案内します
◆定員◆ 40名(先着順)
◆場所◆ 神楽サロン 2階
住所:〒162-0843 東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル
TEL:03-6265-0580 / FAX:03-6265-0581
アクセス:有楽町線・南北線「市ヶ谷駅」出口5より徒歩5分または
JR「飯田橋」西口、東西線・有楽町線・南北線「飯田橋駅」出口B2aより徒歩8分
◆お申込み・お問い合わせ◆
Eメールにて(1)参加日(2)お名前(よみがな)(3)Eメールアドレス(4)電話番号を添えて、表題を
【「タイガからのメッセージ上映会」の件】として以下までお申し込みください。
神楽サロン(担当:戸谷、瀧澤)
Eメールアドレス:info@kagurasalon.com
TEL:03-6265-0580/
FAX:03-6265-0581
≪タイガは冬も呼んでいる≫
12/13(土)「ロシア・ビキン川流域/冬のタイガを訪ねる旅6日間」説明会
http://taigaforum.jp/
【作者プロフィール】
相馬万里子
Hawaiian art and craft
mele mahina オーナー
Natural Solution 代表
デトックストレーナー
米国ISFN 日本ニュートリション協会認定
サプリメントアドバイザー