特集: 極東ロシアの小さな村

第2回 極東ロシアの玄関 ハバロフスク



極東ロシアの玄関となるハバロフスクへは成田空港から鮮やかな黄緑色の飛行機「S7」に乗って、 わずか2時間55分のフライトです。





空の旅の間、目に入ったのはひたすら平らな大地と蛇行する凍った川、 ロシアの大陸的な風景が新鮮で私は子供のようにワクワクと外の景色を眺めていました。

飛行機を降りると、全く飾り気がないのですが何となくヨーロッパの香りのする空港。 すぐにハワイと比べたくなりますが、片や飛行機を降りた途端に 「ハワイにようこそ!」と言わんばかりの青い海、 咲き乱れる花の観光客歓迎ムードにあふれているのに対して、 そういった歓迎ムードというか浮かれた空気は全くない入国審査や空港の雰囲気です。



ホテルについてまず出かけたのがシベリア鉄道のハバロフスク駅です。 写真は夕暮れ時、美しくライトアップされた駅舎が 少し薄暗い私のロシアのイメージとはあまりにかけ離れた明るい表情でした。

実は私がロシアにあこがれた理由の一つは、実家の父が私が生まれたころ(40数年前…) ヨーロッパ旅行からシベリア鉄道で帰ってきた時の写真があった事なのです。 子供心にあの大きな大陸を一週間もかけて横断する鉄道があるということがとても不思議でロマンチックだったのです。 まさにこのハバロフスク駅はこの大陸がヨーロッパの東端であることを物語っているかのようにお出迎えしてくれたのでした。

この日のハバロフスクの気温はマイナス15度、ちょうどアテンダントの野口さんが当日送ってくれた気温図が残っていました。 東京が11度ですから2月の冬の最中、さらにマイナス26度の温度差です。 その分ホテルは完ぺきな暖房で温かく快適な一夜を過ごしました。

意外にもホテルの部屋に飾ってあった写真が青い海に浮かぶ南の島、バスルームは青で統一されていて イルカの模様のシャワーカーテンだったのがとても印象的で、大きな大陸の国家もトロピカルな南国に憧れるのかと思うと ロシアにちょと親しみがわきました。





一夜明け、とにかく外国を訪れたら出向きたい市場へ!
まず目に飛び込んだのはきれいなベリー類を売る屋台、外気温は氷点下ですから全て冷凍状態で売られています。 ベリー類のおかれている屋台には一緒に薬草やハーブのシロップなども売られていフルーツやおやつといった位置づけではなく、 冬の間の貴重なビタミンとしてサプリメントや民間薬に近い立場で売られていることに驚きました。

サプリメントアドバイザーの自身から見ても…いま、抗酸化能力で注目されているベリー類がこうして伝統的に ロシアの人々の体を支えていたことを知って改めてその効果を納得!ロシアのおばあちゃんの知恵袋の奥深さを知りました。



市場は露店の場外と温かな室内に分かれていて、室内の市場にはまたありとあらゆる食材が売られています。 市場だけあって、さすがにどれも新鮮でどことなく手作り感があって見ているだけでとても楽しいのですが、 特に大きな肉の塊を斧でバンバン!と捌くお肉屋さんは何ともたくましく目を奪われました。

ロシアはまだまだメガストアの影響がなくてスローフードなのだな…と思っていたら、 ロシア人のガイドさんいわく「市場の食材は新鮮だけどの値段は高めで、スーパーマーケットの方が安いですよ!」と… 。 やはり何処も消費の流れは同じなのかと少しがっかり。しかしながらスーパーに品物が豊富に並ぶようになったのも割と近年の事だそうです。







もう一つ驚いたのは、意外なことに東洋の食材が多い事。よく考えれば陸続きなので不思議ではないのですが、 ロシアとキムチはあまりにも予想外。

キムチのほかにも日本製のお醤油や瓶詰、 この旅の最後に立ち寄ったウラジオストクのスーパーマーケットには 1個700円近い日本のリンゴやナシもありました。

ミックスカルチャーなのは食べ物だけではなくて、目にはいる人々の顔もいわゆる白人のお顔の方と、 我が家のご近所さんかと思うほど日本人的な方まで様々です。



市場の後はロシア正教の教会ウスペンスキー聖堂と凍ったアムール川を見に行きました。 この教会は19世紀に建設されたのですがスターリン時代の宗教弾圧によって破壊され 2001年当時の設計図を基に再建されました。

ウスペンスキーを訳すと「聖母マリア」ということになるそうです。 その名にふさわしい凛とした美しい外観の教会です。



ウスペンスキー教会が見下ろすのが、かの有名なアムール川。 凍った水面の上を吹いてきた風が物凄く冷たくて、この時に初めて 、寒すぎるとiPhoneの電源が落ちてしまうのを体験しました。まさにフリーズです。(笑)

このアムール川の対岸はもう中国ということになりますが 川の蛇行のため写真で対岸に見えている陸地が中国ではないそうです。

昔、教科書で学んだこと、頭では分かっていたことを 目や身体で体験する面白さをこの年になって感じます。



もう一つ訪れたのは、スパソ・プレオブラジェンスキー聖堂(救世主顕栄大聖堂)。 こちらの教会は氷点下の冷たい広場から一歩中に入るとふわりと温かくて 天井からの光がまるで春のように降り注いでいました。

所狭しと祀られるイコンは素朴で温かみがあります。ロシア正教については勉強不足ですが、 教会という場所がそれぞれの信仰の天国に近い姿、 上質世界を現しているとすれば、長く極寒の冬を味わうロシアの人々が何とも温かくカラフル、 それでいて何かどっしりとしたイスラム的な美しさのある ロシア正教に救いを求めた気持ちがわかるような気がしました。

そして再びロシアという国がミックスカルチャーであることを感じる空間でした。




ハバロフスクの半日観光を終えて、いよいよこの後、クラスニヤール村に向けて出発します。 ガイドブックにもインターネットの検索にも該当しない村ですから、ほぼ、どこにいくのかも、なにをするのかも、 何を食べるのかもわからないワクワクな旅の始まりです。

知らない、わからないという事こそが人生の中の大きな楽しみなのかもしれませんね。




【今月の村の人】



ナターリャさん
ロシアの肝っ玉母さん
クラスニヤール村の元村長





【作者プロフィール】
相馬万里子
Hawaiian art and craft
mele mahina オーナー

Natural Solution 代表
デトックストレーナー

米国ISFN 日本ニュートリション協会認定
サプリメントアドバイザー