特集: 極東ロシアの小さな村

第3回 クラスニヤール村へ



クラスニヤール村の事は、映画「タイガからのメッセージ」を観たり、 タイガのツアーに参加したりしなければ、きっと私は一生名前も聞くことなく過ごしていただろうと思います。

あとから、ロシアに詳しい人やロシア人に聞いてもこの村を知る人は一人もいないばかりか、 知っていてもロシアに極東地域があるという事くらいで、 ましてやロシアに野生のトラがいることも全員が知りませんでした。



地図を見れば当たり前の事なのですが、どこか地方の村の名前を出しても何となく場所がわかったり、 話の輪の中に偶然にもその村の出身者がいたりする日本とはスケールが違います。

改めて、この大きな大きなロシアの小さな一点にフォーカスして環境支援をしたり ドキュメンタリー映画を作ったりしたタイガフォーラムの目の付け所と ロシアに星の数ほどある村の中でもこの村の魅力が特別であることを感心せざるを得ません。

クラスニヤール村にはハバロフスクからバンに乗り8時間のドライブになります。 はじめてロシアを訪れた私にとっては見るもの全てが珍しくさほど長さを感じない時間です。

舗装された都会の道から、高速道路へ、そして森の中を走るひたすら白く長い雪の道です。 だんだんと景色も、垣間見える人の暮らしもシンプルに雄大になって行くのでまるでタイムトリップをしているようです。



途中何度かトイレ休憩を取りますが、そのトイレ事情もドライブインにある見慣れた水洗の トイレ→誰かの家?もしくはお店?の離れのトイレ、ここではもう小さな掘立小屋の床板に穴が開い た状態→山の中の天然のトイレという事になります。

バスの同乗者は男性も女性もいるので車から降りるとそれぞれが逆方向に向かって木陰へ、 適当な場所を探して適度に離れて用を足すので、それなりのチームワークも必要とされて 必然的にツアーの仲間とも一体感が生まれるのが面白いところ! 

この天然のトイレはキャンプやハイキングを体験したことのある方ならわかると思いますが 慣れてしまうと気持ちがいいものです。しかし、そこは極東ロシアの虎や熊の住む森ですから、 そんなことあるわけないよ!と思う反面、余計な想像力を働かせて風や木のしなる音にも聞き耳をたてながら挑みます。 実際に天然トイレで襲われた人がいるかは?次回の旅の時に現地の人に聞いてみます。



最後は走りやすい公道から枝分かれした雪の山道を行きますがここが難所でもあり、 なかなか味わえない旅の醍醐味です。

2月後半という事もあって雪が荒れて深く掘れ、ところどころ穴のようになった山道を ドライバーは慣れたもので容赦なく進みますから、車の中はその度に上下左右に揺れて(跳ねて…) 車の天井に頭をぶつけること数回、テレビでよく見る秘境に向かう車中シーンさながらです。



山道に入り2つほどの村を通り過ぎて、ビキン川と映画の中で見た、夏に子供たちが川に飛び込んでいた橋を渡ると 3つ目の村がクラスニヤール村です。

ツアーのタイトルに「はじめてなのに懐かしい…」と書いてあったのですが、その通り。 クラスニヤール村にはすぐにお隣の村ともどこか違う穏やかさと懐かしさがあると思いました。

後から知った話ですが、通り過ぎた近隣の村は一時期森林伐採のために入植してきた人たちの村で、 現在は伐採ビジネスが下火になったので人々は離れて村は閑散としてしまっているそうです。



後々、このタイガの森林の問題についても詳しく触れていきたいと思いますが、 極東ロシアの名も知らぬ村でさえ近代社会の影響を受けて変化せざる負えないことを私は目の当たりにし学ばせてもらったと思っています。 そして今後もリアルタイムにこの村やタイガの行く末をリアルタイムに学んでいきたいと思います。

太陽の落ちる少し前の夕方についた村は、雪が思ったほど深くはなく数本のメインストリート?に沿っていかにもロシアの田舎風の可愛らしい家や 木製の柵が地面から生えるように並んでいました。



「かわいい!」私のこの村の第一印象はこの一言です。



村での私の滞在先はヴォーバさんとナターリアさんご夫婦の家。この2人が私が初めて親密に付き合うロシア人です。 無知な私はロシアといえばプーチン大統領のようないかつい、しかめっ面の白人を思い浮かべますが、 ステイ先の二人はその真逆と言ってもいい陽気でフレンドリーなロシア人(ウデヘ人)です。



私たちの到着に合わせて用意しておいてくれたナターリアさんの愛情料理と温かいペチカにもてなされて クラスニヤール村での最初の夜は更けていきました。



今月の村の人
スン・ポリーナおばあちゃん
今では、貴重なウデヘ語の歌を歌ってくれています。
「長生きしてください!」というと、
「私は神様の決めた分だけ生きますよ。」と返してくれました。







【作者プロフィール】
相馬万里子
Hawaiian art and craft
mele mahina オーナー

Natural Solution 代表
デトックストレーナー

米国ISFN 日本ニュートリション協会認定
サプリメントアドバイザー