特集: 極東ロシアの小さな村
第4回 お宅拝見
基本的にホテルのないクラスニヤール村での宿泊先は個人のお宅でのホームステイですが、
主婦の私にとって家事に関わる事、水回り、暖房お風呂などは特に気になるポイントです。
ステイ先に到着して早々に家の中を物珍しく見て回るのは失礼とは思いながらも、興味を
そそられるものです。今回はそんなお宅拝見の様子をお伝えします。
まず、住居としてお家の中には一般的な水回りと言えるような設備はありません。
蛇口をひねれば水が出ると思っている私たちにとってはある意味衝撃ですよね。
水は全て井戸から手で汲み上げるのですが、その井戸すらも一家に一つではなくて
何軒かで共用にしていたり、少し離れた場所にバイクやソリで汲みに行く家もあります。
流し台以外は私たちの日本の生活とさほど変わりがなく
プロパンガスのガスコンロと冷蔵庫はほとんどの家にあるようです。
家の中にある唯一の水回りといえば、写真の左側にある青いプラスティックの装置、
上の四角い部分にお水の入れて小さな蛇口から水が出てくるようになっていて、
朝の洗顔や歯磨き、手洗いなどにつかいます。
装置の下にはまたもやバケツが置いてあって汚れた水がたまるようになっています。
井戸から大事に汲んできたお水はバケツで流しのない台所に運ばれてお料理や洗い物に使われます。
どんなに不便かと思いきや、ロシアのお母さんたちは実に効率よくバケツでの台所仕事をこなします。
食後の洗い物は大きな洗面器一杯のお水で済ませ、汚れたお水と食べ残しや生ごみと言えるものは裏の畑に捨てて終わり、
水滴の一つも残らない台所はとても清潔で気持ちの良いものだとはじめて知りました。
クラスニヤール村でのお風呂はバーニャと呼ばれるサウナ式、母屋から数メートル離れた可愛らしい丸太小屋がそれです。
小屋の中ではシンプルな薪のストーブの上に大きななズンドウが置かれグツグツとお湯が煮立ててあります。そして、
一方には冷たい井戸水の大きなバケツがあり、洗面器の中で煮立ったお湯と冷たい水を混ぜながら適温にして身体や髪を洗います。
薪ストーブとお湯から上がる湯気で身体は心から温まるので、夜寝るまで身体はぽかぽかです。
お母さんが汲んでくれた水を森の木の薪で沸かして大事に使う感覚、排水溝もなく使った水が床の木の間を通ってそのまま地面に戻る感覚、、
それは私がそれまでの人生の中では味わったことのない新しいものでした。
ロシアのお母さんは働き者です。私のステイした家のナターシャさんも村役場での仕事をこなしながら体調の悪いご主人の面倒を見て、
家事をこなし、おまけに私たちまで預かっているのですからさぞかし忙しいはずなのに、
夜はどっかりとソファーに座ってテレビを楽しんでいるし、村の人が訪ねてくれば、
すかさずお茶を入れてティータイムを楽しむ余裕。
それに比べて、東京で暮らす私たちの一見便利な暮らしのなんとややこしい事か!
本当のサスティナブルとは、一つ一つがその場で完結していること、
その場で土にかえることだと身に染みました。そして、そのことに対して人が責任を取ることです。
それはカッコイイとか、環境に対してどうだとか、システムだとか、
そんなロジックなものではなくひたすら気持ちのいい感覚として私の中に残ったのです。
【今月の村の人】
「エカテリーナ・ウザさん」
ロシア語の名前の面白いところは、本名に対して日本人には
ちょっとニュアンスがわかりにくい相性がつくところです。
エカテリーナさんは相性「カーチャ」となることが多いそ うです。
カメラを向けると「ちょっと!ちょっと!まって〜〜!」と
口紅を塗りなおして満面の笑顔をご披露してくれました。
異国にいることを忘れてしまう心温まる最高の笑顔です。
【作者プロフィール】
相馬万里子
Hawaiian art and craft
mele mahina オーナー
Natural Solution 代表
デトックストレーナー
米国ISFN 日本ニュートリション協会認定
サプリメントアドバイザー