特集: 極東ロシアの小さな村

第5回 アムール川と毛ガニ





先日、「Food Voice」というある食べ物をテーマとして その食べ物を食べながら背景や生産過程を知ることで 食物に対する感謝と見識を深めようというイベントに参加させていただきました。

今回のテーマは「アムール川と毛ガニ」! 1人一パイの毛ガニを食べながらタイガで 活動を続けるタイガフォーラムの野口氏の講義を聞きました。

さて、アムール川と毛ガニと聞いてすぐにその関係性にピンと来る人はなかなかいないと思います。

我らがビキン川を支流とするアムール川は中国とロシアの国境となりながら北上し最後は 樺太(サハリン)の北端付近でオホーツク海へと流れ込みます。そしてその水はオホーツク海を南下し 北海道沿岸にたどり着きます。

これだけでもアムール川の栄養豊富な水が 北海道沿岸を潤していると説明がつきそうなものですが、ここにはさらに繊細な自然の仕掛けが あるのです。



ご存知の方も多いと思いますが、カニ類は卵から生まれたばかりの時期、幼生として小さなプランクトンのような形で生息します。 その餌となるのがさらに小さな植物プランクトンですが、その植物プランクトンが光合成で増える際に必要とするのが、海水中の鉄(Fe)です。

昆布やワカメに鉄分が豊富なことでもわかるように海中で植物が育つためには鉄が必要不可欠となりますが、 世界中どこの海でも鉄が豊富にあるとは限りません。 それは鉄の比重が重いため海底に沈んでしまって拡散しにくいという性質があることも理由です。



アムール川の流域は鉄を多く含む湿地帯が多くそこで鉄を蓄えた水がオホーツク海に流れ出すという事に なるのですが、一般的に考えると鉄は沈んでしまいますよね?では、なぜ?その鉄を含んだ水が沈まずに 北海道まで旅ができるのかという所に大きな秘密があります。

実はアムール川流域の森林地帯の土壌には「フルボ酸」という貴重な物質が含まれているのです。

Wikipedia で調べると「植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質のうち、 酸によって沈殿しない無定形高分子有機酸。」と書いてあります。

わかりやすく説明すると、太古(白亜紀)の植物の腐食物が地層の中で圧縮された最終物質で、 生物が生きていく上での必要不可欠な栄養素やミネラルのみが完全なオーガニック(太古の植物なので) の状態で熟成されたもの、と表現できると思います。

そしてこのフルボ酸、生物にとっては実に都合のよい事ばかりの物質で人間が飲んでも栄養素の吸収率が高く、 おまけに身体に有害な重金属や化学物質は包み込んで体外に排出してくれるという優れものです。
近年では放射性物質との関連も指摘されて一躍話題の物質。 



サプリメントアドバイザーの私としてもお勧めしたいサプリメントの筆頭に挙げられるものの一つで、 我が家では日常的に摂るようにしていますし、インフルエンザや熱が出たときにも頼れる味方です。

通常の点滴でさえ体内への吸収率が60%ほどなのに、フルボ酸は飲用で98%が体内に吸収されるという 驚くべき物質なのです。

さて、この驚異の「フルボ酸」アムール川の水にも驚くべき恩恵をもたらしています。
ビキン川の猟師小屋で生活するときは川の水を汲んでお茶を入れたり食事を作ったりしますが、水自体は薄茶色をしています。 この薄茶色こそがロシアの大地から染み出ている「フルボ酸」です。

そこで、先ほど申し上げたように金属を包み込み水に浮く性質のある「フルボ酸」が川の中で鉄と結びつくと 「フルボ酸鉄」になり、沈まずに流れ続けることができるのです。

「フルボ酸」の浮き輪に乗って、見事に北海道沿岸までたどり着いた鉄が植物プランクトンや海藻類を育てていると思うと、 日本の家庭でアムール川の恩恵に与っていない台所はないという事になりますね。

鉄とフルボ酸がアムール川で結びつかなければ、「北海道にカニを食べに行こう!」なんてツアーも、 おいしい昆布で出汁を取る日本食の文化もなかったかもしれません。



ヒトの考えた国境や言葉の違いなど、おかまいなしに自然は大きな大きなスケールで私たちの暮らしを支えていることを 思い知らされる「アムール川と毛ガニ」なのです。

【今月の村の人】
「村の猟師 リョーハ」

釣が大好きな猟師リョーハ
いつも船の上から釣糸を垂れています。
「俺は寝ても覚めても釣りがしたいんだ!
俺の魂が、そうさせるのさ!」
実にうらやましい、独身貴族です。








【作者プロフィール】
相馬万里子
Hawaiian art and craft
mele mahina オーナー

Natural Solution 代表
デトックストレーナー

米国ISFN 日本ニュートリション協会認定
サプリメントアドバイザー