特集: flânerie(そぞろ歩き)

<錦秋の京都を巡る>

第2回 嵐山 天龍寺〜北野天満宮



京都の紅葉は、11月中旬から12月初旬が見頃といわれていますが、 近年は、地球温暖化のせいか徐徐に遅くなっているよう。

ともあれ、京都の紅葉は格別!

朝晩の冷え込みが厳しい盆地であることなどが カエデの色付きに関係しているのでしょう。

さて、今回は、筆者の大好きな嵐山・天龍寺から歩きはじめましょう。



まさに錦秋というにふさわしい景観を誇っているお寺です。



紅葉巡りは、観光バスが到着する前の早朝がおすすめ! 8時半からオープしています。(2016年11月末現在)

世界遺産、嵯峨嵐山の天龍寺は、1339年に亡くなった後醍醐天皇を弔うため 足利尊氏により創建されました。

開山は、初代住職は夢窓疎石で、夢窓国師とも呼ばれます。 その多大な貢献により、朝廷から夢窓国師をはじめ 7つの国師の称号を授けられたそうです。

早朝の天龍寺にはまだそれほど人は多くありません。

建物の多くは明治期に再建されたものですが、 大方丈の前に拡がる曹源池庭園は夢窓疎石作庭で、 国の史跡・特別名勝第一号に指定されています。

夢窓はやはり世界遺産の西芳寺庭園をはじめ、 他にも多くの庭園の設計を行いました。

かつては嵐山までその広大な境内にあったといいます。 今は、古来歌に詠まれた嵐山や小倉山を借景にして 水に映える紅葉を際立たせています。



庭園内に紅葉がそれほど多くあるわけではありませんが、 松や水、石と空間との絶妙なバランスが端正な佇まいを かもしだしています。

DATA
天龍寺
京都府京都市右京区嵯峨天竜寺芒ノ馬場町68
http://www.tenryuji.com/


次は、桂川の袂まで出て、渡月橋など川の景観を楽しみ宝厳院に進みましょう。

宝厳院は室町幕府の将軍に次ぐ地位にあった細川頼之公により、 1461年、今の上京区に創建されました。

その後2002年に現在の天龍寺の南側に移転・再興されました。

庭園は、嵐山を借景にした回遊式の山水庭園で 夢窓国師の流れを汲む策彦周良(さくげんしゅうりょう)禅師の作で 「獅子吼(ししく)の庭」と呼ばれています。



「獅子吼」とは「仏が説法する」の意味だそうです。 庭を巡れば真理が肌で感じられる、とか。

まず、苦海・三尊石の庭。 黒石が敷き詰められた苦海(空海)、 それを渡った右手の築山に三尊、釈迦如来を模した石、 手前に彼岸に渡る舟石が用意されています。

本堂前を過ぎると清流が、まるで峡谷のよう。



獅子岩、碧岩、響岩などの巨石が据えられています、 碧岩の苔と紅葉の対比が見事です。



足元を見ると、ぎっしり敷き詰められた苔の絨毯に 赤い紅葉が華やかに散っています。

垣の種類も豊富です。 これは豊丸垣。豊丸という茶人が考案したものとか。



巨岩と紅葉の大木、緑の苔・・・。 見事な季節です。

気の向くまま庭園散策を楽しみしょう。

最後に受付を出ると紅葉のトンネルが見送ってくれます。

単なる紅葉だけではない、様々な要素が一杯詰まった宝厳院。 嵐山の紅葉スポットの穴場です。

DATA
宝厳院
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36
http://www.hogonin.jp/


さて、次は、菅原道真公を祀った「北の天神さま」と呼ばれる北野天満宮。



境内西側には、天正19年(1591)豊臣秀吉が洛中洛外の境界また、 水防のために築いた土塁「御土居」の一部が残っています。

その「史跡御土居」には、約250本の木々が色付き当時の面影を 残しています。



特に樹齢350年から400年といわれる三つ又の紅葉は 見どころ。

また、御土居にはかつて紙漉き場であった紙屋川が流れていて、 紅葉が川の水面に映えてなかなかの風情。

苑の北端には橋がかかり情緒たっぷり。



「このたびは 幣もとりあへず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに」 という菅原公の歌が思い出されます。

「もみじ苑」の公開は12月初旬まで。 珍しい「御土居のもみじ」の景観を楽しむなら 今のうちです。

DATA
北野天満宮
京都市上京区馬喰町 北野天満宮社務所
http://kitanotenmangu.or.jp/


天龍寺あたりのお休み処は、老松嵐山店がいいかもしれません。

京都嵐山の天龍寺から嵯峨野の竹林に向かう途中にあります。

早朝にホテルを出発すると午前のティブレークもありかも。

奥の茶房で坪庭を眺めながら季節の上生菓子と緑茶で しばし外界の喧騒を忘れられます。

帰りがけに和菓子のお土産も調達できます。

DATA
有職菓子御進調所
老松嵐山店
京都市右京区嵯峨天龍寺
TEL:075-881-9033
http://www.oimatu.co.jp/