特集:「My favorite parks 」

【16】並河靖之七宝記念館庭園



   

「植治」は京都の植木屋の屋号で、その7代目小川治兵衛は明治・大正・ 昭和を通じて活躍した著名な庭師です。

一介の植木屋だった彼に隣家の並河靖之が自邸の造園を依頼しました。

並河は1889年のパリ万博で金賞を授与されたほどの有識七宝作家でした。 その意向を受け植治は七宝の研磨用水としてひかれた琵琶湖疏水の水を 大胆にも庭半分を占める大池とし、高低差のある樹木と様々な石を用いて 東山連峰を借景とする斬新な庭を創出したのです。


<大池に張り出した母屋の主柱を支える貴船石>

外国の賓客も多く訪れたという母屋の広間から目の前に広がる庭に向き合うと、 池に浮かぶ小島や転々と続く沢渡り石、石橋、伽藍石の踏石等や大小様々な 樹木が織りなす風景は、自然と人工がほどよいバランスで混ざり合い、なんとも 心地よい贅沢な庭でした。


<大池を囲む様々な石と高木・灌木の織りなす美しい設え>


<錦鯉も色を添えています。>

旧来の侘寂の庭やシンボリックな寺社のそれとは一味違った新しい庭の誕生は 「水の庭」と評判になり、山縣有朋公の「無鄰菴」の作庭、平安神宮・円山公園 などの公共公園から南禅寺界隈の別荘群の作庭へと繋がっていったのです。


<岩場から流れ落ちる滝>


<舟型の自然石の縁先手水鉢>

植治家と並河家が隣り合わせだったことに加えて、工事の4年前に琵琶湖疏水が 完成していたという2つの偶然から生まれた庭だったのです。

最後になりましたが、記念館に飾られた並河靖之の有線七宝の作品は、筆舌に 尽くしがたい素晴らしさです。ご訪問の折には是非ご覧ください。

DATA
並河靖之七宝記念館庭園
住所・〒605-00368 京都府京都市東山区三条北裏白川筋東入ル堀池町388
交通・地下鉄・東山線「東山駅」下車1番出口より徒歩3分
入館料・大人/800円 ,大学生・70 歳以上/600 円, 高校生・中学生/400円
小学生以下・障害者手帳お持ちの方/無料
開館時間・10:00〜16:30(入館は16:00まで)
休み・月と木曜日 
*祝日の場合は翌日に振替・夏季・冬季・展示替期間
http://www8.plala.or.jp/nayspo/








 

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[ 作者プロフィール ]

Caco
ガーデニング・
プランナー

農学部卒業後、ご主人と造園設計事務所を開所。現在に至る。

趣味:旅行、ガーデニング、テニス、絵本

トップページの「プロムナード」と「一鉢から始めるガーデニング」、新連載「私の好きな手仕事」は、ケータイ・サプリwebマガジンのための書き下ろしです。
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