特集:「My favorite parks 」
【20】アルハンブラ宮殿@・・スペイン・グラナダ
高校生の頃、スペインのギタリスト、ナルシソ・イエペスが奏でるギターの
名曲「アルハンブラの思い出」は哀愁を帯びた美しいメロディーが心に
残りました。
それがアルハンブラ宮殿を指していると知ったのはずっと後になってからの
ことでした。
<アルハンブラ宮殿の遠景>
最初のスペイン旅行では、もう5月だというのに雪を頂くシェラネバダ山脈を
背景に、緑の中に立つ赤茶けたアルハンブラ宮殿が際立って美しかったことを
覚えています。
その外観は堅牢で簡素ですが中に入ると他のヨーロッパの国々では類を見ない
イスラムの細密な装飾に目を奪われ、次々に続く数知れぬ美しい広間には必ず
水を用いた装飾を凝らした中庭があります。、アラベスクの窓、色とりどりの
モザイク等、千夜一夜物語の世界にタイムスリップしたような驚くばかりの
優雅な美しさに圧倒されました。
<壁に施された美しい模様とコーランの一節(アラビア語)>
<アラベスクの窓>
<美しい噴水>
その時、なぜスペインにイスラムの芸術文化がこのような形で残されているのかと
不思議に思いました。
8世紀の初めにイスラム教徒軍が北アフリカからイベリア半島に進撃し、北部を除く
半島全域を征服しました。そして幾つものイスラムの王朝が代々この地に城塞都市を
築きあげて行ったのです。その間、国土を回復しようとするキリスト教徒軍と攻防戦が
繰り広げられますが(レコンキスタ=再征服運動)800年続いた戦いの末、1492年
最後の砦グラナダは陥落し、レコンキスタは終了しました。
しかし13世紀から14世紀にかけてイスラム芸術文化は絶頂を極め、現在のアルハンブラ
宮殿が残されたわけです。
ヨーロッパの庭園史から見ると、古く紀元前のペルシアの伝統を受け継いだのがイスラム
の庭園と言われています。
宮殿内の部屋には必ず中庭があり、噴水や池があります。イスラムの庭園では水は命と
純潔の象徴で様々な形で多用されています。
メスアールの中庭やコマレス宮のファサード(正面のデザイン)の音もなく流れる噴水、
ライオンの中庭やリンダハラの中庭のまるで真珠玉が飛び散るような噴水、パルタルの
庭やアラヤネスの庭の水鏡の池、水を主役に大切に用いています。
<メスアールの中庭の噴水>
<
<アラベスクの窓の向こうのリンダハラの庭の噴水>
<アラヤネスの庭の水鏡の池>
一説にはコーランの中に出てくる楽園の天蓋が「回廊」列柱が「ヤシ」
必ず配置されている水は「砂漠のオアシス」を表しているのだそうです。
それに加え、これらの噴水の水は地下を流れ常に冷えているので、冷房の
効果も兼ねていたわけです。
そして、この庭園の文化はスペインを中継して中世ヨーロッパに広まって
いったのです。
(参考文献)ヨーロッパ庭園物語・・ガブリエーレ・ヴァン・ズイレン・・創元社
住所・スペイン・グラナダ
休み・1月1日、12月25日
開園・3月〜10月・・8時半から22時
11月〜2月・・8時半から18時