特集:「My favorite parks 」

【22】アビニョンTGV駅前広場
( GARE D’AVIGNON TGV)

  

以前仕事でフランスのリヨンに行った際、その機会を利用してリヨンから TGVに乗って1時間10分の南仏アビニョンまで足を伸ばしてみました。


<TGVアビニョン駅の構内>

TGVの駅前からシャトルバスに乗って15分、堅牢な中世の城壁に囲まれた 古都アビニョンに到着しました。

誰もが知っている童謡の中で歌われた「アビニョンの橋」は旧市街を横断して 反対側の城壁を抜けた外側を滔々と流れるローヌ川にかかっていました。 想像よりずっーと立派な石橋でしたが、なぜか川の中ほどで途切れています。


<ローヌ川にかかるサン・ベネゼ橋>

12世紀に造られた橋は全長900mもありましたが戦争や川の氾濫で 破壊されその都度修復されたものの17世紀以後は打ち切られ、今の姿が あるのだそうです。

川の橋の後方に高くそびえる宮殿は1309〜1377年まで7人のフランス人 ローマ教皇が住居とした教皇庁宮殿です。一時はローマに代るカトリック 中心地として繁栄した為、その名残の教会や修道院、貴族の館などが現存 します。

そしてそれらがユネスコ世界遺産にアビニョン歴史地区として登録された 美しい街を形作っているのです。

ところで古都の新しい玄関とも言えるアビニョンTGV駅は2001年に新設 されたものです。パリの凱旋門に対して新凱旋門が造られた様に古い都に 対峙するかのごときシンプルで洗練された駅舎と駅前広場の創出はフランス人 ならではのセンスでしょう。


<アビニョンTGV駅前広場入口の門>

おそらく、何もない農地に新しい駅が造られたらしく、見渡せば周囲に 目立つ建物等は何もなく、ただ青空が広がっています。 広場は車道と歩道、オープンスペースと駐車場で構成されています。 最初に目を引くのは岩です。ゴロンと転がして転々と並べてあるのです。


<岩のガードレール>

1個の岩は平均で0.6×1.0 mぐらいで、良く見ると置かれた場所によって フェンス、ガードレール、道標、ベンチなどの役目を担っている様です。 どっしりとして自然で芝生にもコンクリート舗装にも似合っています。 作者の意図はモダンアート、エコロジー、それとも廃物利用でしょうか。 様々に考えられて愉快です。


<青空に映える岩たち、斜面の上が駅です。>


<転々と並べられた岩と美しいポプラの並木>

駅舎はシャルル・ドゴール空港を思わせる流線型で白枠のガラスのレーバーは 温室風にも見えます。


<流線型の駅舎にそうプラットホーム>

そこから駅前広場入口の瀟洒な鉄格子門を結ぶ歩道には長方形の池が配置され 水中に置かれたいくつものコンテナにはアシ、睡蓮が植えられ、四季の移り 変わりを知らせています。また線路下の斜面に造られた流れや広場の端に既存の 小川を残したのはビオトープとして昆虫たちを集める試みでしょう。


< ずっと向こうまで続くせせらぎのビオトープ>


<長方形の池に植えられたアシ>

駐車場の目隠しの青空にそびえ立つポプラや敷地境界の濃緑のヒバが色彩を 添えています。狭い列車の中で何時間も過ごした後にこのような広々とした 空間で胸一杯深呼吸すればリフレッシュ効果満点です。

フランスの伝統的な駅舎は豪華絢爛で「これが駅?まるで宮殿みたい!」と 驚くほど仰々しい物も多い中、このような一歩も二歩も進んだ近未来的な設えも フランス人の得意とする技のようです。


<荷物整理?列車に間に合いますか?>

これからはアビニョンといえば橋と駅舎とこの岩たちを思い出すことでしょう。







 

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[ 作者プロフィール ]

Caco
ガーデニング・
プランナー

農学部卒業後、ご主人と造園設計事務所を開所。現在に至る。

趣味:旅行、ガーデニング、テニス、絵本

トップページの「プロムナード」と「一鉢から始めるガーデニング」、新連載「私の好きな手仕事」は、ケータイ・サプリwebマガジンのための書き下ろしです。
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