ドイツ・ファンタスティック街道と南仏の美しい村を訪ねて 
Fantastic Road in southwest Germany & the beautiful villages in French Riviera
6.Niceその2ニースの美術館

南仏コート・ダジュールの中心ニースは、昔から芸術家たちの憧れの町でもありました。 紺碧の海と空は、アーティストのイマジネーションを刺激し、多くの傑作や新しいアートのムーブメントを生み出してきました。

ニースにゆかりの深いムーブメントといえば、ニース出身の芸術家イヴ・クラインが中心アーティストであったヌーヴォー・レアリスム(Nouveau Realisme)が知られています。
このムーブメントは、1960年10月27日、美術評論家ピエール・レスタニが、第二次大戦後の工業化社会や消費社会の新しいリアリティを模索する作家たちに共感し、8人の作家と共に「ヌーヴォー・レアリスム(新しいリアリズム)」を宣言したことから始りました。

参加した8人とは、アルマン、イヴ・クライン、レイモン・アンス、ジャック・ド=ラ=ヴィルグレ、ダニエル・スペーリ、ジャン・ティンゲリー、フランソワ・デュフレンヌ、マルシャル・レイス。後にセザール、ミンモ・ロテッラ、ニキ・ド・サン・ファル、ジェラール・デシャン、クリストも加わりました。

イヴ・クラインを中心にヌーヴォーレアリスムのアーティストの作品が存分に見られるのがニース近現代美術館です。

ニース近現代美術館 Musee d'Art Moderne et d'Art Contemporain
http://www.mamac-nice.org/english/

width="400"


ニース近現代美術館は、マセナ広場からさらに東へ、長距離バスも発着するバスターミナルの先の街中に、グレーの大理石の壁をアーチ状の黒い鋼鉄で結んだような、ひときわユニークな外観を現しています。建物の周りには、ニキ・ド・サンファルやカルダーの野外彫刻が点在。60年代のヨーロッパとアメリカの前衛美術を辿ることができる美術館として知られています。

エントランスで、7日間有効のミュージアム共通カード、Musees de Niceを購入。このカードは、7日間ニースの市立美術館で使える共通ミュージアムカード。7ユーロ(2007年度)なので、2館行けば、お得。ただし、シャガール美術館などは含まれていません。

width="400"


美術館では、まずは、イヴ・クラインの部屋へ。 ヌーヴォーレアリスム宣言文も展示されていて、感動ものです。 インターナショナルクラインブルーのモノクローム作品、人体の拓本、バーナーを用いて制作した作品、ビデオなどで、彼の多彩な表現を見ることができます。 ニースに生まれ、神秘思想にはまり、柔道で少なからず日本とかかわりがあり、若くして急逝した伝説の芸術家。ニースで出会ったアルマン、ロード・パスカルと紺碧の海岸で、真っ青な世界を3分割する相談をし、アルマンは、大地をパスカルは海をクラインは空を取ったという象徴的なエピソードも。


この美術館、ご興味のある方にはすべてが見所ですが、お天気がよければ、屋上のテラスにでてみることをおススメします。ユニークな形状とニースの眺望が楽しめることでしょう。

シャガール美術館 Musee national Message Biblique Marc Chagall
http://www.musee-chagall.fr/


一方、シャガール美術館は、マセナ広場からやや東に上った高台の高級住宅地、シミエ地区にあります。このあたりは、大邸宅や高級アパートメントなどが並ぶ、旧市街とは全く違う印象の地域。筆者がマセナ広場からバスでシャガール美術館に向かった時のことです。車内アナウンスがあるわけでもないので、キョロキョロとしていると、前に座っていたおじいさんが、最寄のバスストップがきたら教えてあげるというのです。しかし、それらしきストップがきても、この美術館はダメと降ろしてくれません。通せんぼされた手を振り切って降りて正解!あやうく乗り過ごすところでした。いったいなにが目的で行ってはいけないと言ったのでしょう。それともあやしい人?こういうこともあるので、最寄の停留所は、きちんと把握し、気をつけましょう!


シャガール美術館は、人気スポットらしく海外からの旅行者も含め、多くの人でにぎわっていました。明るく開放的な館内に、作家自身が寄贈したという17の大きな絵画や、彫刻、ステンドグラス、モザイク、タペスリー、スケッチ、グアッシュ、エッチング、リトグラフなど聖書をテーマにした作品が展示されています。附属ホールのステンドグラスも見所。

マティス美術館 Musee Matisse
http://www.musee-matisse-nice.org/


マティス美術館は、シミエの丘をさらに上っていったオリーブや松が植栽された広大な庭園の中にあります。レッド・オークルの壁にベージュのレリーフが美しい17世紀のヴィラ。
増改築されたこのヴィラでは、画家マティスの常設展示と企画展示、ワークショップなどが開催されています。


コレクションは、絵画、切り絵作品、ドローイング、版画、彫刻、絵本などに加え、写真やオブジェなどのマティス自身のコレクションに及びます。


マティスは、1917年から亡くなる1954年までニースと近郊のヴァンスに居住。ボナールもまた、カンヌ近郊のル・カネに1925年から1947年亡くなるまで居住しています。 シャガールも、1950年から南仏に永住。イヴ・クラインやアルマンはニースの出身者です。ピカソもルノアールも晩年は南仏で過ごしました。紺碧の海と空、南仏の光が彼等を魅了していたのでしょうか?

アートは近現代美術の宝庫ニースのもう一つの魅力です。

尚今月のアート&カルチャーでご紹介している川村記念美術館で開催されている DIC創業100周年記念展「マティスとボナールー地中海の光の中へー」(5月25日まで)では、日本にいながらにしてマティスの作品をまとめて観る事ができます。また、コレクションも近現代美術が充実していますので、おでかけになってはいかが?

アート&カルチャー「赤ちゃん連れでも楽しめる美術館」第26回 川村記念美術館
http://www.ktai-supli.jp/art/index.html