ドイツ・ファンタスティック街道と南仏の美しい村を訪ねて 
Fantastic Road in southwest Germany & the beautiful villages in French Riviera
13.モンマルトルプチ散歩(Promenade in Montmartre)


パリの北部、モンマルトルの丘の頂に、パリのランドマークのように建つロマネスク・ビザンチン様式の白亜のサクレ・クール寺院(Basilique du Sacre' Coeur)は、パリに行った方なら一度は訪れる観光名所です。

サクレ・クール寺院(Basilique du Sacre' Coeur 仏・英語)
http://www.sacre-coeur-montmartre.com/

この寺院と南側に広がるテラス、テルトル広場辺りまでは、観光客でごったがえす観光地ですが、丘の背後は、パリ市街とは一線を画した静かな田舎の風情が残るパリの中でも特色のある地域です。というのも19世紀中盤、セーヌ県知事ジョルジュ=ウジェーヌ・オスマンがパリを大改造するまでこの丘は、ブドウ畑が広がり風車が建ち並ぶ郊外の村だったのです。

映画「アメリ」のヒットやパリ産ワインという最近の観光トレンドに、スロー・フードなライフスタイルも相まってパリの田舎、モンマルトルに再び注目が集まっているかもしれません。

もう70年以上毎年行われている10月のブドウ収穫祭も、今では地域のお祭りから年々規模が大きくなってコンサートなど多数のイヴェントが一週間近く続くフェスティバルになりました。

そんなわけで、今回はガイドブックにはない静かなモンマルトルの丘の通な歩き方をご紹介しましょう。

いきなりですが、丘は背後から登りましょう。メトロ・ラマルク・コランクールの駅もしくは、バスでサン・ラザールを通り、コランクール通り辺りで下車します。

このバスはモンマルトル墓地の脇を通ります。ここには文学者のスタンダールやデュマ、画家のドガなど多くの芸術家が眠っています。お時間があれば、ここもお散歩に加えてもいいかもしれません。

さて、メトロもしくはバスを降りて、まずは、シックな並木道、ジュノ通り(Avenue Junot)を進みます。この辺りは、モンマルトルでも高級住宅地で、重厚なアパルトマンが軒を連ねます。


しばらく進むと右手にかわいらしい家が並ぶ小道が見えます。パリでは珍しい一戸建てが並んでいる一角、ヴィラ・レアンドル(Villa Leandre)。

Villaとは、別荘地の私道といった意味だそうですからその昔、これら一戸建ては、パリに住む人々の郊外別荘だったのでしょう。小路の入口にはこの道の名の由来、画家のシャルル・レアンドル(Charles Leandre1862-1934)のレリーフが。彼は、風刺画家として知られ、この地で亡くなったとか。 この辺りには、他にもアーティストのアトリエだったところがありますから、家々の壁などをじっくり観察しながら歩くといいかもしれません。


さて、しばらく行くと、小さな広場があり、高さのある壁から何かが飛び出しているのに気が付きます。

近付いていくと、それは、なんと壁から抜け出そうとしている紳士のブロンズの彫刻! ここは、小説家、劇作家、童話作家としてフランスで親しまれている、マルセル・エイメ(1902-1967)が、住まい、亡くなった地なのです。この彫刻は、彼の代表作のひとつ「壁抜け男(Le Passe-Muraill)」をモチーフにジャン・マレーが制作したそう。「壁抜け男(Le Passe-Muraill)」は、ミュージカルとしてヒットし、日本でも劇団四季が上演しているようです。さすが芸術家の街らしい小粋な演出ですね。

昔の風車の名残、ムーラン・ドゥ・ラ・ガレットやブドウ畑もこの先です。

ブドウ畑については、ブログLetters from Europe へ

http://letters-from-europe.ktai-supli.jp/?eid=570997

Le Passe-muraille de Jean Marais, place Marcel-Ayme

モンマルトルは標高130メートルの丘ですから、坂道や階段が多く道幅が狭い上石畳 も多いので、散歩もなかなか疲れます。最近はこの丘までモンマルトルバスが運行し、シスター方の足になっているよう。


モンマルトルは、もともとは『Mont des Martyrs(殉教者の丘)』に由来します。紀元272年頃、この丘の付近で、パリ最初の司教サン・ドニと二人の司祭の3人が首をはねられて殉教したと伝えられています。

また、1534年この丘で、イグナチオ・デ・ロヨラがフランシスコ・ザビエルら六人の同志と共に、イエズス会創設のきっかけを創ったといわれています。彼等の後の活動を思えば感慨深いものが。サクレ・クール寺院(1919年竣工)ができるずっと以前からこの地はキリスト教の聖地なのです。


テラスからは、パリが一望できます。 やはりこれは素晴らしい!最近はパリ周縁部に高い建物が多くなってきているのに驚かされます。


サクレ・クール寺院までのアクセスは南正面からフニクレールという ケーブルカーか階段を上るのが一般的。写真はこのフニクレールの駅。


しかし、私達のお散歩は、この南側には縁がありません。下りは丘の東側に回ります。
この時東欧からの観光客らしい女性から道を聞かれました。 昔から、観光客は外国人であろうと地元民であろうとおかまいなしに道を聞いてきますが 今時は、あやしい人かもしれませんので、注意が必要です。


カフェに座れば今も絵ごころがわくモンマルトル。


この階段を降り、メトロ・ラマルク・コランクールに戻るのも良し、 さらに坂道を北に下り、骨董品店や、お菓子屋さんに立ち寄るのも楽しいかも。


最後は18区のメリー(区役所)に辿りつきます。 メトロのジュール・ジョフラン駅は目の前。近くには市場も。


モンマルトル散歩は静かなサクレ・クール寺院の北側がおすすめです。 アーティストが多く住んだ街ですから、ゆっくり目をこらせば、 様々な場所にその痕跡を見つけられるでしょう。 気の向くまま坂を下り、のんびりと階段を登れば、今もユトリロの描いたモンマルトルの風情を感じることができるかもしれません。